かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

未完の横尾忠則―君のものは僕のもの、僕のものは僕のもの@金沢21世紀美術館

グラフィックデザイナーでアーティストの横尾忠則氏による作品展。名前は知ってるけど、具体的な作品を問われても正直言ってピンとこないのですが(美術の教科書に載ってた?)、各展示とも、とてもおもしろく見られました。

最初の展示室から興味津々。ひたすら「Y字路」を描いた作品が並んでいます。圧巻です。まず、Y字路に着目したっていうのがそもそもヤラレタ!という感じです。どんだけY字路好きなんだ!とニヤケてきます。…と思ったら、知らないのは自分ばかりで、横尾氏は以前から「Y字路」シリーズの作品をつくっていたのですね。調べてみたら、5年前にも「ほぼ日」でタモリさん、糸井重里さんと対談していました。
ほぼ日刊イトイ新聞 ― Y字路談義。横尾忠則・タモリ・糸井重里が語る芸術?

ほかにも、桃色肌の裸体女性をモチーフとした「ピンクガール」シリーズというのがあります。これらは1960~70年代に発表されたらしいのですが、最近それらの設定やニュアンスを微妙に変えて、別ヴァージョンを続々と自己複製しているのでした。「Y字路」「ピンクガール」はともに現在進行形、横尾氏の中では決して完結していないということですね。大量の未発表・未公開作品の展示も含め、「未完」というテーマの意味がようやく理解できました。

Y字路の次にぼくが釘付けになったのは、波紋が広がる水面下で人間が高速でコマ回転しているのを真上から見たところ(よくわからないですよね)みたいな作品群です。その水面らしきものの上に文字が浮かび上がっているのですが、その文字は上下左右が逆になっています。で、その作品のタイトルが「この絵を逆さに見ないでください」ですって。ハハハ。この作品を最初に描いたときは、どんどんいろんなパターンを描きたくなる手法を見つけた!という感じで、ワクワクしたんじゃないかなと想像します。

この「水面」シリーズ(と、ぼくが勝手に名づけています)の中に「君のものは僕のもの、僕のものは僕のもの」という作品があります。これが「水面」シリーズの中でもいちばん凝視していた作品だったのですが、この「君のものは僕のもの、僕のものは僕のもの」というジャイアン的思考のひとつの具現が、最終展示室にあるアンリ・ルソーのパロディシリーズではないでしょうか。なるほどルソーという画家の作品はやわらかく鮮やかな色彩ながらどことなくシュールで若干キュビスムな匂い。横尾氏がシンパシーを覚えるのもうなづける作風です。横尾氏はルソーの作品をいったん自分の中に取り込み(君のものは僕のもの)、もしもシリーズ的発想で元ネタと別ヴァージョンの作品を新たに生み出します(僕のものは僕のもの)。そうして展示してあるルソーの元ネタを見て、その横にある横尾氏の作品を見ると、これがいちいちおもしろい。思わず声を上げて笑ってしまいましたよ。

昨年、世田谷美術館でおこなわれた横尾氏の作品展(「冒険王・横尾忠則」)でもルソーシリーズが公開されていたそうで、「ほぼ日」でも特集をしていました。そのサイトでルソーシリーズの絵が見られます。2ページ目の「正確な寸法で描かれたルソー像」とか(笑)。
ほぼ日刊イトイ新聞 ― 冒険王、横尾忠則。


ほかにも、おびただしい数の「滝」の写真のポストカードとか、写真やらチケットの半券やらを貼り付けた実際に使った日記帳とか、Y字路作品の制作風景ビデオとか、見どころ満載の作品展。オススメです。

(2009/08/15@金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館 未完の横尾忠則―君のものは僕のもの、僕のものは僕のもの
期間:2009年8月1日(土)~2009年11月3日(火)
会場:金沢21世紀美術館 展示室7~12、14、プロジェクト工房
料金:(当日)一般=1,000円、大学生・65歳以上=800円、小中高校生=400円