かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

サマーウォーズ

これはおもしろい!! 興奮した!! そしてなぜだかホロリとくる…。今年の邦画(と言っていいのかな?)では、個人的には今のところナンバーワン作品です。

「OZ(オズ)」というネットサービスが全世界的に普及し、ショッピングから健康管理、行政手続まで、現実社会のさまざまなサービスが事実上OZアカウントで一元管理されるようになった現代社会。この舞台設定は架空ではありますが、まったくありえない話でもありません。ところがある夏の日、何者かがOZのセキュリティシステムに侵入し、OZの各種サービスは機能不全に陥ります。OZによって便利になった半面、この仮想世界でトラブルが生じると、たちまち現実世界に波及するわけです。ということで、日常生活は大混乱、しまいには世界破滅の危機にまで及ぶ事態となってしまいました。で、これに立ち向かうのが、戦国武将の末裔という豪気で由緒正しい家柄の「陣内家」親戚ご一同。および、陣内家の偽ムコ殿を演じる羽目になった本作の主人公、数学だけは得意だが気弱な草食系男子高校生・健二くんであります。

こうして物語設定を書き出してみると、朝顔の鉢植えがキレイな昔ながらの日本家屋で、ハイテクを駆使した仮想世界でのハイパーバトルを繰り広げるというシュールな対比なんですが、それら両者が意外にとっ散らかることなくきちんと整理され、またうまくリンクしつつ進んでいきます。30人近く登場する陣内家の大家族も、それぞれのキャラクターがハッキリしていて、とても活き活きと描かれています。

物語を鑑賞するうえでも、ひじょうに心地いい流れで感情移入できました。序盤は、陣内家の各登場人物を、健二の立場から居心地の悪さそのままに距離を測りつつ、探り探り遠巻きに眺める感じでしたが、やがてOZの中で、また陣内家でも事態が急変し、各登場人物の想いが際立ち出します。そして、戦に挑んでいく過程で一気に各登場人物への親近感が増していき、ぐんぐん物語に引き寄せられていきました。クライマックスの大勝負では、もはや健二の立場では見ていません。自らが陣内家の一員になった感覚、おそらく観客も一体となって応援している感覚になっていきます。

健二とともに戦う陣内家は、長野県上田市にある武田家家臣の末裔。徳川の大軍を相手に奮闘したのが誇りといいますから、どうみても真田家がモデルなんですが、まさに「負け戦であっても戦う」というその家風こそが、この戦いをすがすがしいものにしています。家族の職業も医者、消防、警察、自衛隊など緊急時にこそ力を発揮しそうなものばかり。なんと言っても、当主の栄おばあちゃんのカリスマ的存在感があってこそであります。ヴァーチャルな戦いを家族の絆で打ち破るという、まあベタなスローガンともいえますが、心地いいコミュニケーションのありかたが、確かにそこにはありました。

なお、日本の夏といえば高校野球ですが、陣内家にも高校球児がいました。ほかの家族が大騒動になっているなか、彼は長野県予選の準決勝、決勝と勝ち進んでいくのでした。その試合展開が物語のピンチやチャンスと連動しているのも面白かったです。「佐久長聖」「松商学園」とか実在する強豪高が登場するのがリアルです。


(2009/08/14@ユナイテッド・シネマ金沢)

★★★★★