かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

スラムドッグ$ミリオネア

割引のない日なのにめずらしく劇場が混んでいました。さすがオスカー受賞作の公開最初の日曜日!と思いきや、スクリーンに入ったらさほどでもありません。何のことはない、同時期に公開された「Rookies」目当ての客がほとんどなのでした。そういえば中高生(特に男子)が多いと思ったのですよ。ということで「Rookies」ほどには注目されていなかったこの「スラムドッグ$ミリオネア」ですが、それでもやっぱりすごかったのであります。

インドのスラム街に生まれた青年、ジャマールが、人気テレビ番組「クイズ・ミリオネア」(インド版)に出演します。「ラーマ神が右手に持っているものは何?」「米国100ドル紙幣に描かれている肖像は誰?」「リボルバー拳銃を発明した人物は誰?」――数々の難問に次々と正解を重ねていくジャマールでしたが、不正の疑いをかけられ、全問正解まであと1問というところで警察に拘束されてしまいます。

無教育のジャマールがなぜ正解を知っていたのか?

それは問題が偶然にも、彼のいままでの人生において強烈に記憶に残る事柄ばかりだったから。幼い日に母を亡くして以来、兄のサリーム、そして動乱の中で出会った少女ラティカとともにジャマールが歩んできた道は、それはそれは壮絶極まりないものだったのです。

物語は、警察の取調室にて、出題された問題をひとつひとつ検証するというかたちで進んでいきます。番組の出題シーンが順に振り返られ、その正解のもととなったジャマールの経験が回想されていきます。その過程の中で、彼の苛烈な生い立ちが明らかになっていきます。そしてまた番組のシーンに戻り、正解を答えていく・・・その構成が抜群に巧妙です。

この作品のキモは、ジャマールが際どく生き抜いてきたインドの混沌とした下層社会の描写でありましょう。スリリングな展開にハラハラするとともに、インド社会の現実というものに愕然とします。

ただしその一方で、最終的には純愛ラブロマンス的な物語に収束され、インド社会をめぐる問題提起的要素が薄らいだ感もあります。これををよしとするかどうか。社会派とエンターテインメントとの両立とみれば高評価に繋がるのでしょうが、ぼく個人としては、結末がベタ過ぎることもあって、諸手を挙げては賛同しがたいところです。あと、インド映画ならではのエンディングのダンスがありますが、ダンスの出来があまりよろしくないのも少々残念な点です。

もっとも、強烈な印象を残す作品であるのは間違いなく、有意義な鑑賞でありました。

(2009/05/31@ユナイテッド・シネマ金沢)

★★★★