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かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

オーケストラ!

ロシア・ボリショイ交響楽団で清掃員として働くアンドレイは、実はこのオケの元有名指揮者。当時の非ユダヤ化政策に反抗の意を示したため、楽員たちとともにオケを追われていたのでした。ある日、パリの劇場から届いた公演依頼のFAXを見つけたアンドレイは、自分たちがオケになりすまして演奏することを計画。かつての仲間を再び訪ね集めます。しかしアンドレイにはさらに別の思惑がありました。ソリストに指名した若手女性ヴァイオリニスト、アンヌ=マリー・ジャケ…。アンドレイたちはまんまとパリに乗り込み、いよいよコンサートが始まりました。

【以下、ネタバレあり】
作品を観る前は、寄せ集めオケの感動サクセスストーリーかなーと漠然と思っていたのですが、かなりドタバタな喜劇的テイストでして、かと思えば、シリアスな政治的背景を扱っていたりして、なかなかに盛りだくさん。集められた楽員たちがみな物見遊山気分なので、果たしてこの企みがうまくいくのだろうかと心配になったり、なぜこのような無茶な企みをしただろうか、ソリストのアンヌとは何者なのだろうか…とアレコレ予想しながら見進めます(思うツボ)。

で、どうにかコンサート本番までこぎつけます。演奏会1曲目がいきなり有望ソリストのコンチェルトとか普通ありえねえとか、一切のリハなしで演奏会に臨むとか、楽器の取り扱いの杜撰さとか、ぶっつけ本番で始めた序奏のあまりの下手さ加減とか(そりゃそうだ)、なめんなよってことが多すぎるわけですが(音楽に対する真摯な愛情が欠けているとCamillaさんがたいへん憤慨しておられた)、まあそこは映画の文脈ということで。

ともあれ、この作品はラスト12分なのです。コンサート本番、アンヌ=マリー・ジャケが演奏するチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。ド下手くそな序奏に続いてアンヌの独奏が始まると、一瞬にして場の空気が変わりました。その音を聴いて、アンヌがこの曲のソリストに指名された意味を、楽員全員が即座に悟るのです。それは「事変」が起こった当時にそれぞれの耳に深く染み付き、忘れることのできない音の記憶でした。そしてその忘れがたい音は、当時のアンドレイの熱心な特訓により、各楽員がわが身に叩き込んだ技術をも完全に呼び覚まし、彼らの演奏はガラリと変貌を遂げます。一方映像では、その当時の回想シーンがコンチェルトの旋律に乗せてフラッシュバックされています。アンヌの正体も含め、すべての真相が明らかになります。この堂々たる名曲を聴きながらのなんというカタルシス!! 

原題は「Le Concert」。「協奏曲」あるいは「コンサート」と訳すべきではないかと思っていましたが、コメディでもあり、オケ全員の物語でもあるのだからやはり「オーケストラ!」でいいのだなと思い直しました。

★★★★★

(2010/05/30@イオンシネマ金沢フォーラス)


【2010/08/04追記】
「演奏会1曲目がいきなり有望ソリストのコンチェルトとか普通ありえねえ」などと書きましたが、前半のプログラムが存在したはずとの指摘を受け、いろいろ検索して調べてみました。すると、この作品を気に入って映画館へ4回(!)も観に行った方のブログを発見。プログラムは以下の通りとのこと。
偽オーケストラのシャトレ座での公演は「チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、セレナード、プロコフィエフ」というプログラムの予定でした。セレナードはおそらくチャイコフスキーだと思うのですが、プロコフィエフは曲名は明かされません。
ラブリー脳でハッピーライフ - 映画『オーケストラ!』が素敵な理由 2
http://blogs.yahoo.co.jp/delightful_mikan/61178019.html

そういえば思い出してきました。交渉役のイワンが地下室から電話線に細工をしてパリの劇場に電話をかけて、その際プログラムを伝えたのでしたね。曲名不明のプロコが交響曲などわりと大きい曲ならば、普通はセレナード→チャイコン→休憩→プロコという曲順になりますが、だとしたら1曲目のセレナードの演奏はボロボロだっただろうなあと想像します。でも劇中でアンドレイがプロコフィエフ嫌いだと言ってましたから、プロコをメインにするとは考えがたい。ということはやっぱり、前半がセレナード→プロコで、休憩を挟んでチャイコンということになりますかね。ただこの場合、前半は間違いなくひどすぎて、後半はお客さんが随分と減っちゃうかもしれません。もしかするとホントにチャイコン→休憩→セレナード→プロコなのかも。あ、これだとプロコがメインになっちゃうか。うーん、よくわかりません。

【さらに】
最後の12分がなんとYouTubeにありました!(いいのかなあこれ)
アンヌやアンドレイ、楽員たちの表情の変化が絶妙。いま観たらそれぞれに意味がわかります。またちょっと泣いちゃいました。
その1:http://www.youtube.com/watch?v=aOPGepdbfpo
その2:http://www.youtube.com/watch?v=kBH6H5a3KHQ