かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

12人の怒れる男

名作との評判が高い「十二人の怒れる男」のリメイク。三谷幸喜氏がこれをモチーフとして舞台化した「12人の優しい日本人」の映画版なら観たことがあるのですが、実はオリジナルの「十二人の怒れる男」は未見です。ただ、三谷版のようすから、12人の陪審員たちがじわじわと真実に迫っていく密室群集劇なのだろうとは見当がつきました。本作ではさらに被告人の少年の姿や、彼の事件にまつわる回想が随所に挿入され、2時間40分という長丁場の作品となっています。しかし、その長さをまるで感じないほど、ぐいぐい引き込まれて見入ってしまいました。

【以下、ネタバレあり】
もっとも、劇中、興味深いというか解釈の難しいシーンがいくつかあって、鑑賞直後は戸惑いもありました。たとえば、陪審員ひとりひとりが延々と身の上話をし、その結果、心が動いて結論が変わるとか、陪審員1がしきりに気にしていた聖母子像の写真とか、戦場で犬が人の手首をくわえながら歩いてくるラストカットの意味とか…。しかし、ともに鑑賞した友人Kとその後飲みながら話したり、帰宅後ネットでレビューを漁っているうちに、自分なりにそれぞれ腑に落ちました。すなわち、「身の上話で結論が動く」というのは、法や秩序より感情が支配する「ロシア的」なものの表れでしょうし、「聖母子像」(レビューによると、討論が始まる前に陪審員1が自ら取り出して飾ったのだそうです…見逃していました)も、慈愛の精神を重んじたということでしょう。「手首をくわえる犬」については、監督(=陪審員長役の人だったそうですね!)が敬愛する黒澤明の「用心棒」にまさにそういったシーンがあり、そのオマージュらしいです。本作に即して解釈するなら、手首に光っていた指輪は、無法な戦場をかすかに照らす一筋の光明といったところでしょうか。

事後、ロシアの事情などを知ってみると、見ごたえは満点で、非常に深い作品だったと思います。ということで、鑑賞直後の印象は★4つでしたが、今年最初の作品はめでたく★5つをつけさせていただくことにいたします。

(2009/01/06@シネモンド)

★★★★★