【OEK定期297PH】井上マエストロのラテンプログラム!ライジング☆スター郷古廉の「スペイン交響曲」(2011/3/21@石川県立音楽堂コンサートホール)
東日本大震災後、初のコンサート鑑賞。実は3/16にチョン・ミョンフン指揮チェコ・フィルのブラームス&庄司紗矢香さんによるチャイコンという豪華プログラムの東芝グランドコンサート金沢公演に行く予定だったのですが、チェコ・フィルが来日できず公演が中止になってしまったのでした。今回のOEK公演も、ソリストの郷古廉くんが宮城県多賀城市在住の被災者で、出演が危ぶまれていました。ご自宅は高台にあったため津波の被害もなく損壊もなかったのですが、ライフラインは不自由なまま。見慣れた街の風景が悲惨なものに様変わりし、こんな状況で演奏が出来るのか…と、郷古くんは出演すべきかどうかとても悩んだそうです。しかし、この状況だからこそ、自分に出来ることは演奏しかないと思い定め、この金沢へやってきてくれたのでした。
演奏会の前に、団員のみなさんが楽器を持たずにステージに登場し、井上マエストロによるひとこと。「ホントは居ても立ってもいられない。楽器をうっちゃって助けに行きたい気持ち」「でもぼくらがいま現地に行っても役立つかどうか…」「自分がやれることをやるようにしよう。だからぼくたちは音楽をやります」「でも、それはいま頑張っている人に対しての音楽。すでに亡くなってしまった人に対しては、もはやできることは何も無い。ただひとつできるのは、祈ることだけ」…黙祷。
さてここから仕切りなおしです。「普通に」音楽会をはじめましょう。いったん裏に戻った団員のみなさんが楽器を持ってあらためて配置につき、やがて井上さんが颯爽とステージに登場。ロッシーニの「アルジェのイタリア女」序曲です。様子をうかがうような弦のピチカートでひそやかに始まる序奏から、やがてスカッと明るい疾走がはじまります。ロッシーニらしく表情豊かな演奏が繰り広げられ、井上さんの躍る指揮も健在。一瞬にして心躍る「音楽モード」に変えてくれました。
続いての曲はルーセル「小組曲」…とプログラムには記載されてあり、初めて聴く曲だなあと思っていたのですが、いざ曲がはじまると、やさしく漂うハープにフルートが唄う旋律…どうも聴き覚えがあるなあ??…やがて、その次の曲のドビュッシーだと気づき苦笑い。いつの間にか曲順が変更されていたのですね。管楽器がおおいに活躍するオーケストレーションで、ドビュッシーの色彩感がさらに豊かになったようでした。というわけで、その次の曲がルーセル。ドビュッシーの少し後の作曲家で、この「小組曲」はかなり近代的な匂いを感じました。「田園曲」など、あまりのどかな田園風景が思い浮かばない(笑)。
休憩時間。井上マエストロと池辺晋一郎さん(石川県立音楽堂洋楽監督)がバケツを抱えて中央壇上から客席に降り、また、団員さんたちがそれぞれ会場各所へ足を運び、入場者に震災義援金を募って歩きます。これが岩城さん時代からの伝統(?)バケツ募金。集まった義援金は郷古廉くんに託し、彼の地元多賀城市に寄付されるとのことです。
さて、後半はその郷古廉くんの登場。ラロの「スペイン交響曲」です。ビシッと意欲的な若々しい眼力、スラリと伸びる長身から繰り出されるヴァイオリンは…思いのこもったダイナミックな熱演! 主張すべき箇所は堂々と伸びやかで、しかしやさしく語るべきは人が変わったかのように哀しく繊細。その表情のつけ方などはとても高校生とは思えません。実は彼の弱音のビブラート、妖しく震える感じというのはあまり趣味ではないのですが、この曲にはぴったり合っていたようです。不快な感じはありません。そうして第3楽章あたりで、ふと、自分自身、ソリストの音しか耳に残ってないことに気づきました。聴き手を惹きつける魅力をもったヴァイオリニストだということでしょうか。流行りの言葉で言えば「持ってる」というか、とっても雰囲気のあるソリストだと思いました。立ち姿もカッコよく、まさにライジング・スター! 井上さんからの評価も非常に高いようですね、将来有望な若者を連れてきてくれて感謝です。
アンコールはOEKによるジムノペディ1番、そして郷古くんによるバッハ無伴奏ソナタをともにじっくりと。郷古くんの揺らし方はバッハとしてはあまりにセンシティブで、この曲に関してはいささか戸惑いがありましたが(苦笑)、これも彼の持ち味ということでしょう。巧いことは間違いない。スター誕生の匂いがひしひしとします。被災地からやってきた17歳の天才ヴァイオリニスト。忘れえぬ年に忘れえぬ才能に出会った、忘れえぬ公演になるかもしれません。
演奏会の前に、団員のみなさんが楽器を持たずにステージに登場し、井上マエストロによるひとこと。「ホントは居ても立ってもいられない。楽器をうっちゃって助けに行きたい気持ち」「でもぼくらがいま現地に行っても役立つかどうか…」「自分がやれることをやるようにしよう。だからぼくたちは音楽をやります」「でも、それはいま頑張っている人に対しての音楽。すでに亡くなってしまった人に対しては、もはやできることは何も無い。ただひとつできるのは、祈ることだけ」…黙祷。
さてここから仕切りなおしです。「普通に」音楽会をはじめましょう。いったん裏に戻った団員のみなさんが楽器を持ってあらためて配置につき、やがて井上さんが颯爽とステージに登場。ロッシーニの「アルジェのイタリア女」序曲です。様子をうかがうような弦のピチカートでひそやかに始まる序奏から、やがてスカッと明るい疾走がはじまります。ロッシーニらしく表情豊かな演奏が繰り広げられ、井上さんの躍る指揮も健在。一瞬にして心躍る「音楽モード」に変えてくれました。
続いての曲はルーセル「小組曲」…とプログラムには記載されてあり、初めて聴く曲だなあと思っていたのですが、いざ曲がはじまると、やさしく漂うハープにフルートが唄う旋律…どうも聴き覚えがあるなあ??…やがて、その次の曲のドビュッシーだと気づき苦笑い。いつの間にか曲順が変更されていたのですね。管楽器がおおいに活躍するオーケストレーションで、ドビュッシーの色彩感がさらに豊かになったようでした。というわけで、その次の曲がルーセル。ドビュッシーの少し後の作曲家で、この「小組曲」はかなり近代的な匂いを感じました。「田園曲」など、あまりのどかな田園風景が思い浮かばない(笑)。
休憩時間。井上マエストロと池辺晋一郎さん(石川県立音楽堂洋楽監督)がバケツを抱えて中央壇上から客席に降り、また、団員さんたちがそれぞれ会場各所へ足を運び、入場者に震災義援金を募って歩きます。これが岩城さん時代からの伝統(?)バケツ募金。集まった義援金は郷古廉くんに託し、彼の地元多賀城市に寄付されるとのことです。
さて、後半はその郷古廉くんの登場。ラロの「スペイン交響曲」です。ビシッと意欲的な若々しい眼力、スラリと伸びる長身から繰り出されるヴァイオリンは…思いのこもったダイナミックな熱演! 主張すべき箇所は堂々と伸びやかで、しかしやさしく語るべきは人が変わったかのように哀しく繊細。その表情のつけ方などはとても高校生とは思えません。実は彼の弱音のビブラート、妖しく震える感じというのはあまり趣味ではないのですが、この曲にはぴったり合っていたようです。不快な感じはありません。そうして第3楽章あたりで、ふと、自分自身、ソリストの音しか耳に残ってないことに気づきました。聴き手を惹きつける魅力をもったヴァイオリニストだということでしょうか。流行りの言葉で言えば「持ってる」というか、とっても雰囲気のあるソリストだと思いました。立ち姿もカッコよく、まさにライジング・スター! 井上さんからの評価も非常に高いようですね、将来有望な若者を連れてきてくれて感謝です。
アンコールはOEKによるジムノペディ1番、そして郷古くんによるバッハ無伴奏ソナタをともにじっくりと。郷古くんの揺らし方はバッハとしてはあまりにセンシティブで、この曲に関してはいささか戸惑いがありましたが(苦笑)、これも彼の持ち味ということでしょう。巧いことは間違いない。スター誕生の匂いがひしひしとします。被災地からやってきた17歳の天才ヴァイオリニスト。忘れえぬ年に忘れえぬ才能に出会った、忘れえぬ公演になるかもしれません。
オーケストラ・アンサンブル金沢 Orchestra Ensemble Kanazawa
第297回定期公演フィルハーモニー・シリーズ
The 297th Subscription Concert / Philharmonie-serie
日時:2011年3月21日(月・祝)15:00開演 Monday 21 March 2011 at 15:00
会場:石川県立音楽堂コンサートホール Ishikawa Ongakudo Concert Hall
指揮:井上道義 Michiyoshi Inoue, Conductor
コンサートマスター:アビゲイル・ヤング Abigail Young, Concertmaster
■G.ロッシーニ Gioachino Rossini (1792-1868)
歌劇「アルジェのイタリア女」序曲
"L'italiana in Algeri" Overture
■C.ドビュッシー Claude Achille Debussy (1862-1918)
[編曲:H.ビュセール Arr.by Henri-Paul Busser (1872-1973)]
小組曲 Petite suite
第1曲 小舟にて En Bateau
第2曲 行列 Cortege
第3曲 メヌエット Menuet
第4曲 バレエ Ballet
■A.ルセール Albert Charles Paul Marie Roussel (1869-1937)
小組曲 作品39 Petite suite Op.39
第1曲 朝の歌 Aubade
第2曲 田園曲 Pastorale
第3曲 仮面舞踏会 Mascarade
--- 休憩 Intermission ---
■E.ラロ Victor Antoine Edouard Lalo (1823-1892)
スペイン交響曲 ニ短調 作品21
Symphonie espagnole in D minor, Op.21
第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ 1st Mov. Allegro non troppo
第2楽章 スケルツァンド:アレグロ・モルト 2nd Mov. Scherzando: Allegro molto
第3楽章 間奏曲:アレグロ・ノン・トロッポ 3rd Mov. Intermezzo: Allegro non troppo
第4楽章 アンダンテ 4th Mov. Andante
第5楽章 ロンド:アレグロ 5th Mov. Rondo: Allegro
~独奏:郷古廉(ヴァイオリン) Sunao Goko, Violin
(アンコール Encore)
■E.サティ Erik Satie (1866-1925)
ジムノペディ 第1番(管弦楽版 編曲:ドビュッシー)
Gymnopedie No.1 (Orchestra - Arr.by C.Debussy)
(アンコール Encore)
■J.S.バッハ Johann Sebastian Bach (1685-1750)
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005 より ラルゴ
Sonata for solo violin No.3 in C major, BWV1005 - Largo
~独奏:郷古廉(ヴァイオリン) Sunao Goko, Violin