かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

Summer Concertante ~シューマンからメシアンへ~ 木村かをり&吉本奈津子@金沢21世紀美術館(2010/07/10)

ぼくは金沢21世紀美術館友の会の会員なのですが、今回、友の会会員は500円で聴けるコンサートが開かれました。プログラムはヴァイオリンとピアノのデュオ曲で、サティ、ストラヴィンスキーラヴェルシューマンメシアン。古典派管弦楽曲からクラシック愛好の道に入った者としては、なかなか食指が動きにくい顔ぶれではあります。ところが、最近よく音楽会でご一緒するCamillaさんの影響で、実はこのところラヴェルピアノ曲にどっぷりハマってしまい(とりわけアルゲリッチの「夜のガスパール」!)、それ以来、近代の楽曲に対する偏見は一切なくなりました(先月の庄司さんのプロコフィエフもよかったし!)。むしろどんどん聴きたくて仕方ないくらいになってます。それと演奏者。ヴァイオリンの吉本奈津子さんは過去2回、OEKとの共演でコンチェルトを聴いたことがあり(2007年9月のベートーヴェン2009年2月のサン=サーンス)、その上品で誠実な演奏に好感を持っています。しかもピアノは百戦錬磨の木村かをりさん。第1回岩城宏之音楽賞である吉本さんにとっても、いいパートナーなのではないでしょうか。というわけで、Camillaさんにご同行願い、この興味深いコンサートに出かけました。

最初はサティ。3つの小曲から成る「右や左に見えるもの - 眼鏡なしで」。タイトルからして変なのですが、曲自体もやっぱり変な感じでした(なんだその感想)。サティはもともとそういう変なタイトルを付ける人らしいです。こういうワケの分からない曲を1曲目に持ってくることこそが、今回の音楽会における演奏者からのある種の宣言なのかなと思いました。

ストラヴィンスキー。この作曲家に興味を持ったのは映画「シャネル&ストラヴィンスキー」で。前衛的でとっつきにくいと思い込んでいたのですが、まるでそんなことはないとわかりました。今回のこの曲もいやいや実におもしろい。疾走躍動するピアノにヴァイオリンの技巧。終楽章は一転、センチメンタル。

次はラヴェル。ヴァイオリンとピアノのためのソナタ。これは素敵な曲…! 実はぼくはこの曲、今年2月にやはり木村かをりさんのピアノで聴いておりました。その時が初聴。ヴァイオリンは堅実な演奏をするOEKコンマスの松井さんでしたが、今回の吉本さんはさらに優しく繊細。第2楽章ブルースはやっぱりカッコいいですね。

※ただし、後日Camillaさんからもっと素晴らしい演奏があるとダヴィッド・オイストラフ&フリーダ・バウアーのCDをお借りたしたのですが…これはすごい!!色気があってカッコいい。悶絶します! というわけでこれも現在すっかりヘヴィーローテーションの1曲。
Violin SonatasViolin Sonatas
Andr��� Navarra

曲名リスト
1. Son Posthume: Allegro Moderato - Josef Suk/Josef Hala
2. Piece En Forme De Habanera - Josef Suk/Josef Hala
3. Son: I. Allegro - Josef Suk/Andre Navarra
4. Son: II. Tres Vif - Josef Suk/Andre Navarra
5. Son: III. Allegro - Josef Suk/Andre Navarra
6. Son: IV. Vif, Avec Entrain - Josef Suk/Andre Navarra
7. Son: I. Allegretto - David Oistrakh/Frida Bauer
8. Son: II. Blues - David Oistrakh/Frida Bauer
9. Son: III. Perpetuum Mobile - David Oistrakh/Frida Bauer
10. Tzigane, Rhap De Conc: Lento-Moderato-Allegro - David Oistrakh/Vladimir Yampolsky

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休憩時間にワインを1杯いただきまして…後半最初はシューマン。哀しみに覆われ、どことなく文学的なロマン派の楽曲。正確で上品な吉本さんのヴァイオリンがしっくりきます。実はシューマンもぼくはふだんあまり聴かない作曲家なんですけど(ピアノを弾く人とそうじゃない人の差)、今後はもっとたくさん聴いていきたい作曲家のひとりです。

次はメシアンメシアンといえば木村かをりさんはエキスパートなわけですが、美しい音色の吉本さんのヴァイオリンに、ピアノが力強く相対していくのが印象に残ります。さすがです。まあ正直、ちょっと取っ付きにくかったですけど(汗)。

最後はラヴェルのツィガーヌ。きましたよ、これは。グッときますねえ。吉本さんはたぶんこれを一番演奏したかったのでしょう。ふだんは上品で丁寧な吉本さんのヴァイオリンに、この曲では特に気迫がみなぎっていたように思います。痛切に訴えかけるような…何か。そもそも楽曲自体が素晴らしいということもありますが、実によかったです。

アンコールは木村さんが武満徹、吉本さんが豪州の現役作曲家の作品をそれぞれ1曲ずつ。
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というわけで、近代を中心としたヴァイオリン&ピアノ曲の数々でございました。何と申しましょうか、音楽に何かしら主張があるというか…そこから感じ取れるものは、色彩であったり、鼓動であったり、物語性であったり。そのうえで、古典やロマン派のように必ずしも憶えやすい旋律ではないのに、ぐらんぐらん心を揺さぶられるのです。ぼくにとって新たな分野なんですけど、ますますハマリそうな予感を抱かせてくれました。そういうことも含めて、今回はとても素晴らしい演奏会でした!

金沢21世紀美術館友の会スペシャルコンサート
Summer Concertante ~シューマンからメシアンへ~

日時:2010年7月10日(土)16:00 Saturday, 10 July 2010
会場:金沢21世紀美術館 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa
出演:ピアノ:木村かをり Kaori Kimura, piano
   ヴァイオリン:吉本奈津子 Natsuko Yoshimoto, violin

エリック・サティー Erik Satie
 右や左に見えるもの - 眼鏡なしで
 Choses vues ��� droite et ��� gauche (sans lunettes), for violin and piano (1914)

イーゴリ・ストラヴィンスキー Igor Stravinsky
 デュオ コンチェルタンテ
 Duo concertante, for violin and piano (1932)

■モーリス・ラヴェル Maurice Ravel
 ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト長調
 Sonata for Violin and Piano in G Major (1923-27)

-- 休憩 Intermission ---

ロベルト・シューマン Robert Schumann
 ソナタ1番 イ短調 作品105
 Sonata no. 1 in A minor for Violin and Piano, op.105 (1851)

オリヴィエ・メシアン Olivier Messiaen
 主題と変奏
 Th���me et variations pour violin and piano (1932)

■モーリス・ラヴェル Maurice Ravel
 チガーヌ Tzigane (1924)

(アンコール Encore)
武満徹 Toru Takemitsu
 雨の樹・素描II ~オリヴィエ・メシアンの追憶に
 ~ピアノ:木村かをり Kaori Kimura, piano

■マシュー・ハインドソン Matthew Hindson
 人生の歌 Song of Life
 ~ヴァイオリン:吉本奈津子 Natsuko Yoshimoto, violin