かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

OEK室内楽シリーズ「もっとカンタービレ」スペシャル~安永徹&市野あゆみ with OEK 室内楽の真髄

OEK楽団員のオールプロデュースによる室内楽シリーズ「もっとカンタービレ」。毎回興味を引かれるのですが、公演日がOEK定期公演に近く、連日で早帰りするのがはばかれたため、今まで聴きに来たことはありませんでした。ところが今回の企画は、先日の定期公演で弾き振りをした元BPOコンマス安永徹さんが出演するスペシャルヴァージョン。来月が有効期限の音楽堂マネー(石川県立音楽堂の商品券みたいなもの)が2000円分残ってたこともあり、えいやっ!と早帰りを決行し、はじめてこの室内楽の演奏会に行ってきました。

開場時間の18時30分ちょっと前に音楽堂地下交流ホール前に到着。その場で当日券を購入し(今日はスペシャルヴァージョンなので特別価格2500円→音楽堂マネー2000円分との差額500円のみ支払い)、全席自由のため列に並んで入場しました。ステージはホールの最下層にあり、前3列だけステージと同じ高さ、それより後ろは階段状に高くなっています。前から5列目(下から3段目)の中央やや上手側に座席を確保し、開演時間を待ちます。

この演奏会は司会進行もOEKメンバーが務めます。まずはファゴットの柳浦さんが登場。1曲目はOEKメンバーのみの編成で演奏しますとの挨拶のあと、クラリネットの遠藤さんにMC交替。2009-2010シーズンのOEKコンポーザー・イン・レジデンスであるロジェ・ブトリー氏作曲の木管三重奏曲が紹介され、1曲目がはじまりました。ブトリー氏はフランスのギャルド・レピュブリケーヌという名門吹奏楽団の楽長を長年務めていたため、管楽器の特性を熟知。演奏者を技術的にギリギリなところまで追い込むような技巧的な曲でした。

2曲目からは安永さんが登場。「交響曲の父」ヨーゼフ・ハイドンの弟、ミヒャエル・ハイドン作曲のディヴェルティメントで、おそらく世界中どこにもCD化された音源はないようだとのこと。そんな希少な曲ではありましたが、曲調は素直で、親しみやすい佳作でした。

3曲目は先日の定期公演にてアンコールで演奏されたプッチーニの「菊」。今回は本来の弦楽四重奏コントラバスを加えた弦楽五重奏版です。もともと貴人を追悼するために作られた曲だそうで、後年プッチーニがはじめて手がけたオペラ「マノン・レスコー」にも用いられているほど、悲劇的で「泣ける」旋律です。弦楽合奏版で演奏された先日の定期公演のときは、濁りのないアンサンブルに感動していましたが、今回の弦楽五重奏は個々の旋律がとりわけダイレクトに響き、また違った感じでドラマティックな雰囲気になっていました。たとえて言うなら、先日の弦楽合奏版は悲しい映画のクライマックスに流れる壮大なBGM、今回の弦楽五重奏版は悲しみをアカペラで歌い上げるバラードシンガーズといった感じでしょうか。あまりたとえがうまくありませんでしたね(苦笑)。とにかく素晴らしい名曲、そして名演奏でした。

10分の休憩を挟んで市野さんが登場。曲紹介の後、ブラームスピアノ五重奏曲がはじまりました。今回の演奏曲の中では最もメジャーな曲、ブラームス室内楽の中でも最も有名な曲の1つとのことですが、おそらくぼくは聴いたことがない(汗)。少なくともCDは持っていません。なのでほかの曲と同様、漠然とした感想しか語れないのですが、市野さんのピアノが絶えず続く中、弦楽の各パートはわりと休みがあり、かわるがわる演奏していたという印象です。全体的に情熱的な曲調でありながら受ける印象は暗く渋く寂しく、構成的にも結構込み入っていて、盛りだくさんな曲だな、と。聴けば聴くほど味わいがわかるのでしょうね。これは今後繰り返し聴かなければなりますまい。

最後にオーボエの加納さんがご挨拶。次回シリーズは9月8日の予定で、井上道義OEK音楽監督が登場し、シェーンベルクでパフォーマンスをおこなうのだそう。今後はこのシリーズにも通う予感がしているので(笑)、次回はお得な回数券を購入しようともくろんでいます。

それにしても、みなさんお話が上手ですね。しゃべりの専門家でもないのに大勢の人の前で淀みなく的確にお話をされている姿に感服しました。プロの演奏家であると同時に、人に教える立場でもある人が多いわけで、人前で話をする機会が案外多いのかもしれませんね。自分にはまったくマネのできないことで、ほんとうに尊敬してしまいます。

オーケストラ・アンサンブル金沢室内楽シリーズ「もっとカンタービレ
カンタービレスペシャル”安永徹&市野あゆみ with OEK 室内楽の真髄
Orchestra Ensemble Kanazawa Chamber Music Series "Motto Cantabile"
"Cantabile Special" Toru Yasunaga & Ayumi Ichno with OEK

日時:2009年7月28日(火)19:00開演 Tuesday, 28 July 2009 at 19:00
会場:石川県立音楽堂交流ホール Ishikawa Ongakudo Interchange Hall

■ロジェ・ブトリー R. Boutry
 木管三重奏のためのディヴェルティスマン
 Divertissement en trois Mouvements

 ~オーボエ加納律子 Oboe: Ritsuko Kano
  クラリネット:遠藤文代 Clarinet: Fumie Endo
  ファゴット:柳浦慎史 Fagotto: Shinji Yagiura


■ヨハン・ミヒャエル・ハイドン J. M. Haydn
 ディヴェルティメント ト長調 作品94
 Divertimento in G major, Op. 94

 ~フルート:岡本えり子 Flute: Eriko Okamoto
  ファゴット:柳浦慎史 Fagotto: Shinji Yagiura
  ホルン:山田篤 Horn: Atsushi Yamada
  ヴァイオリン:安永徹 Violin: Toru Yasunaga
  ヴィオラ:ベック・シンヤン Viola: Shin Young Baik


ジャコモ・プッチーニ G. Puccini
 弦楽四重奏曲「菊」 嬰ハ短調 (弦楽五重奏版)
 String Quartet "Crisantemi" in C-sharp minor (string quintet version)

 ~第1ヴァイオリン:安永徹 1st Violin: Toru Yasunaga
  第2ヴァイオリン:ヴォーン・ヒューズ 2nd Violin: Vaughan Hughes
  ヴィオラ:ベック・シンヤン Viola: Shin Young Baik
  チェロ:早川寛 Cello: Hiroshi Hayakawa
  コントラバス:今野淳 Contrabass: Jun Konno


ヨハネス・ブラームス J. Brahms
 ピアノ五重奏曲 ヘ短調 作品34
 Piano Quintet in F minor, Op. 34

 ~ピアノ:市野あゆみ Piano: Ayumi Ichino
  第1ヴァイオリン:安永徹 1st Violin: Toru Yasunaga
  第2ヴァイオリン:大村俊介 2nd Violin: Shunsuke Omura
  ヴィオラ:古宮山由里 Viola: Yuri Komiyama
  チェロ:早川寛 Cello: Hiroshi Hayakawa