かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

【OEK定期258PH】イギリス音楽の系譜~尾高忠明&小菅優

今回の定期公演はイギリス音楽特集ということですが、正直言ってあまりなじみがありません。この日のプログラムをはじめて見たときは、ハイドン先生の「ロンドン」しか聴いたことがありませんでした。予習しておこうとネットでCDを物色したのですが、入手できたのはブリテンの「若きアポロ」のみ。モーツァルトのロンドは注文したものの在庫切れとのことで公演までに届きませんでした。そんなわけで、今回は初めての曲も先入観なくまったりと楽しむことにいたしましょう。

プレコンサートは山野祐子さんのヴァイオリンソロから。J.S.バッハ無伴奏パルティータ第3番プレリュード(たぶん)と、イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番プレリュード。続いて大村俊介・一恵夫妻、大隈容子さん、大澤明さんによる弦楽四重奏。曲目を告げずに演奏し始めたので、今日のプログラムにちなんでハイドンかはたまたモーツァルトかと推量しながら聴いていましたが、果たして、モーツァルト弦楽四重奏曲第1番でした。主旋律を1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンが追いかけあい、さらにはヴィオラが加わっていく第1楽章が特に印象的でした。

さて、本番の公演ですが、指揮は尾高忠明さんです。英国BBCウェールズ交響楽団首席指揮者という経歴を持ち、現役日本人指揮者では英国音楽の第一人者だとのこと。見た目も常に穏やかな笑みをたたえ、温厚な紳士といった感じです。もっとも、前回公演のプレトークで井上音楽監督が暴露したところによれば「キレたら僕より断然怖い。クルマを運転すると人格が変わる」とのこと。桐朋学園斎藤門下の同級生ならではの気安さですかね。

それはともかく、最初の曲はパーセル。初めて聴く曲です。楽器構成は弦楽3-3-2-2-1とチェンバロ。下手から1stVn、2ndVn、Vc、Vaの順で並びます。パーセルは17世紀の英国人作曲家だそうで、なるほど英国のバロック音楽という感じの上品さ優雅さが感じられました。

続いてはピアニストの小菅優さんが登場し、モーツァルトのピアノと管弦楽のためのロンド。この曲も結局公演前に聴いて予習することはできなかったのですが、特に構えて聴くような難しい曲ではなく、モーツァルトらしい明るくキュートなわかりやすい曲でした。小菅さんがニコニコしながら軽やかに演奏しているので、こちらもますます楽しげになってきます。

次は小菅さんに加え、ダウスさん、江原さん、客演の安保さん、そしてカンタさんと、OEK弦楽器の首席奏者がソリストとして登場し、ブリテンの「若きアポロ」を披露。この曲だけは事前に入手し、何度か聴いてなかなかにおもしろい隠れた名作だと認識しておりました。ピアノ+弦楽四重奏弦楽合奏という構成がまず珍しく、各部があるときは流麗、あるときは不気味…いろんな印象を残す旋律をそれぞれ奏でながら交わりうねっていきます。弦楽四重奏ソリストがそれぞれ技巧を凝らす箇所も興味を引きます(ただし、僕の座席からはその方々の姿はピアノに隠れてまったく見えなくなり、この目で確かめられなかったのが少し残念でした)。小菅さんのピアノもさきほどのモーツァルトとは打って変わってダイナミックな演奏。カデンツァもカッコよくて、ばっちり決まりました。傑作!

後半はディーリアスの2つの小品。これも初めて。いずれも穏やかな(少々地味な)曲調です。クラリネットカッコウの鳴き声を奏でる1曲目を心地よく聴きつつ、2曲目はうつらうつらと…あまり印象にありません。まあ、夢見心地ということで。

最後はハイドン先生のロンドン交響曲。これはおなじみの曲。親しみ深い快活な演奏ですっかり目が覚め(苦笑)、ストレスなく気持ちよく聴くことができました。

カーテンコールの後、尾高マエストロがひとことお話を。このプログラムは自分の選曲だと思われがちだが、実はOEKより強く依頼されたものなのだと裏話を披露されました。てっきり尾高さん提案なのかと思いましたがそうではないのですね。まず先に尾高さんの招聘が決まり、ならば尾高さんにはイギリス音楽特集をお願いしよう!ということでしょうか(井上さんの強いご推薦?)。他方、アンコールの選曲は尾高さんに一任されたそうで、このイギリス音楽の系譜という(スキのない)プログラムの後のアンコール曲は難しいのだけど…と前置きがあった後、紹介されたのはグリーグの「過ぎにし春」。なぜノルウェー人のグリーグかというと、エドヴァルド・グリーグはもともと英国人の血筋なのだそうです。「Grieg(グリーグ)」は「Greg(グレグ)」、「Edvard(エドヴァルド)」は「Edward(エドワード)」という英国の姓名に由来するのだということです。また、今回演奏したディーリアスの曲は、ディーリアスがグリーグと親交を結び、ノルウェーを訪れたのを契機に作曲した作品だそうで、そういう意味でもグリーグはイギリス音楽の系譜に連なっているといえるのではと。そんなわけで、弦楽合奏の「過ぎにし春」が演奏されました。これも初めて聴く曲だったのですが、これはビックリ、極上に美しい曲でした。先日のヴァレーズさん指揮の回でのアンコール「アルルの女」のアダージェットに感動したときと同じく、弦楽のアンサンブルが絶品で感動しました。

ところが、曲のラスト、切なく静かな最もいい場面でこともあろうか携帯電話の着信音が!!(しかもその着信音がホルスト「惑星」組曲の「木星」だったので、ホルストもイギリス音楽?だとしたらもしかして演出?などと一瞬思いましたがそんなわけもなく)せっかくの一番いいところを台無しにするバカ野郎が本当に腹立たしく思いました。あれだけ何回も電源を切るようアナウンスがあるのに何を聞いているのか!? 上演中に携帯電話の電源を切るというのは、クラシック音楽に限らず、映画・演劇でも一般常識として守るべきことでしょう?(そういえば映画中にメールを確認するバカもいますね…) 演奏中に自分の着信音がなったらどうなるか想像できないのでしょうか? まあ想像できないからバカなのですが…。こんなバカが続出するのだとしたら、いっそのこと劇場・ホール内では強制的に電波を遮断してほしいですな。技術的に無理なのでしょうか? この日は全般的に曲が終わってもすぐには拍手が起こらず、指揮者が棒をおろすまでゆったりと余韻に浸れていたので、客の入り自体は少なめだったものの聴衆のマナーはいいなあと思っていたところ、この有様ですよ。本当に困ったことです。せっかくのいい演奏がたった一人のバカのために台無しになるという腹立たしいケースでした。ああ、忌まわしい!!

オーケストラ・アンサンブル金沢 Orchestra Ensemble Kanazawa
第258回定期公演フィルハーモニー・シリーズ
The 258th Subscription Concert / Philharmonie-serie

日時:2009年3月21日(土)15:00開演 Saturday, 21 March 2009 at 15:00
会場:石川県立音楽堂コンサートホール Ishikawa Ongakudo Concert Hall
指揮:尾高忠明 Conductor: Tadaaki Otaka
コンサートマスター:マイケル・ダウス Concertmaster: Michael Dauth

■ヘンリー・パーセル H. Purcell
 歌劇「ディドとエネアス」組曲
 "Dido and Aeneas" Suite

  第1曲 序曲
  1. Overture

  第2曲 勝利の踊り(第1幕)
  2. The Triumphing Dance (Act.1)

  第3曲 復讐の女神達の踊り(第2幕)
  3. Echo Dance of the Furies (Act.2)

  第4曲 リトルネッロ(第2幕)
  4. Ritornelle (Act.2)

  第5曲 水夫の踊り(第3幕)
  5. The Sailor's Dance (Act.3)

  第6曲 魔女の踊り(第3幕)
  6. The Witches' Dance (Act.3)


■ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト W. A. Mozart
 ピアノと管弦楽のためのロンド ニ長調 K.382
 Rondo for Piano and Orchestra in D major, K 382

  ~ピアノ独奏:小菅優 Piano: Yu Kosuge


ベンジャミン・ブリテン B. Britten
 ピアノ、弦楽四重奏弦楽合奏のための「若きアポロ」 作品16
 "Young Apollo" for Piano and Strings Op.16

  ~ピアノ独奏:小菅優 Piano: Yu Kosuge
   弦楽四重奏
     [1stVl] マイケル・ダウス Michael Dauth
     [2ndVl] 江原千絵 Chie Ebara
     [Va] 安保恵麻 Ema Anbo
     [Vc] ルドヴィード・カンタ Ludovit Kanta


(アンコール)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ J. S. Bach
 イギリス組曲 第6番 ニ短調 BWV 811より 「サラバンド
 English Suites No.6 in D minor BMV 811 - Sarabande

  ~ピアノ独奏:小菅優 Piano: Yu Kosuge


---休憩---


■フレデリック・ディーリアス F. Delius
 小管弦楽のための二つの小品
 Two Pieces for small Orchestra

 ・春を告げるカッコウを聴く
  On hearing the first cuckoo in spring

 ・夏の夜に川面で
  Summer night on the river


■フランツ・ヨーゼフ・ハイドン F. J. Haydn
 交響曲 第104番 ニ長調 Hob.I-104 「ロンドン」
 Symphony No.104 in D major Hob.I-104 "London"

  第1楽章 アダージョ~アレグロ
  1st.Mov. Adagio - Allegro

  第2楽章 アンダンテ
  2nd.Mov. Andante

  第3楽章 メヌエット(アレグロ)&トリオ:
  3rd.Mov. Menuetto (Allegro) and Trio

  第4楽章 フィナーレ:スピリトーソ
  4th.Mov. Finale: Spiritoso


(アンコール)
エドヴァルド・グリーグ E. Grieg
 二つの悲しい旋律 作品34より「過ぎにし春」
 Two Elegiac Melodies Op.34-2 "Last Spring"