かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

【OEK定期247PH】[クレーメル&KB]×[井上&OEK]合同演奏会「北欧物語」

OEK2008-2009シーズンのフィルハーモニー・シリーズ第一弾。先日のOEK設立20周年記念公演に引き続き、ギドン・クレーメルさんと彼が率いるクレメラータ・バルティカ(KB)をゲストに迎えての合同演奏会です。指揮はもちろんOEK音楽監督の井上道義マエストロ。

仕事を終えてプレコンサートにちょい遅刻ぎみで到着。OEKメンバー(上島さん・大隈さん・石黒さん・大澤さん)がベートーヴェン弦楽四重奏曲を演奏し、続いてKBの首席奏者の方々(Vn×2、Va×2、Vc×1)がメンデルスゾーンの弦楽五重奏曲を披露されました。その後チケットボックスに戻り、シネマ歌舞伎「野田版研辰の討たれ」(9/21@金沢21世紀美術館)および歌劇「ラ・ボエーム」(12/11@金沢歌劇座)のチケットをゲットし、再びコンサートホールへ。

定期会員の座席は今回リセット&シャッフルが行われました。僕は前年までの2階S席から1階SS席に変更し、かなり前方の中央あたりにマイシートを確保。指揮者・独奏者・弦楽器最前列の方々の姿はとてもはっきり見えます。他方、弦の奥のほうや木管の方々の姿は死角になってほとんど見えません。ちょっと残念。

1曲目は井上道義指揮&OEKによるシベリウス「カレリア組曲」。タンブリンのリズムが軽快な第1曲、イングリッシュホルンが美しく歌う第2曲、弾むように元気な行進曲ふうの第3曲。実は恥ずかしながらあまり聴きなれない曲だったのですが、コンパクトながらもメリハリがあってとても気持ちの良い曲でした。

2曲目は今回のメインディッシュ、クレーメルさんによるシベリウスのヴァイオリン協奏曲です。これはさすがに凄かった! KBが加わって弦の厚みを増したオケ(KBが各プルトの表)の中から、クレーメルさんのクールなヴァイオリンが妖しげに響いてきます。かなりか細い音でもしっかり耳に届く。渋く枯れた音色ながら澄み渡るように響く。弱音の存在感とか、渋い透明感とか、一見ありえない概念が目の前で成立しているのです。甘美な調べに酔うというのではないけれども、匂い立つような面妖な演奏で聴衆を魅了する。これこそが魔神と評される所以かと納得したのでありました。

盛大な拍手に応えてアンコールはスヴェンセンのロマンス。初めて聴く曲です。今度は先ほどとは対照的に明瞭で濁りのない音色で清々しく。井上さんとクレーメルさんはシベコンを23年前に共演したとのこと。次回はまた23年後に演ろうと言い合ったのだとか。

後半はまずKBが単独で登場し、指揮者なしでグリーグ「ホルベルク組曲」を。事前告知にはなかったプログラムでしたが、これが思いのほか極上。前奏曲の冒頭から豊かな音量と正確な同調性にいきなり度肝を抜かれました。中低音も深く響いています。KBの男性陣は衣装もオシャレ。黒いパンツに黒いシャツを羽織って裾を出し、ある人はノータイ、ある人は襟を立てつつゴールドのタイを短く締めて。赤い弓を持つ2ndヴァイオリンがいれば、髪を真っ赤に染めたヴィオラの女性もいます。見た目も楽しく、思わぬ高価なオマケをもらったようなお得感。

続いては再びOEKが登場し(今度はOEKが各プルトの表)、やはりグリーグの「ペールギュント」。組曲を1,2と演奏するのではなく、本来の舞台劇の筋書きに沿って曲を並べ替えて演奏されました。このように物語性が強調された構成では、井上マエストロの本領が発揮されます。「花嫁の略奪と嘆き」は激しく不吉な挑発からその後悲哀が覆い、森の動物たちの鳴き声が聞こえる「山の魔王の宮殿にて」ではやがて金管とシンバルが追い立てるように炸裂します。母親が死の床に伏す「オーゼの死」は悲痛な旋律が支配し、おなじみの「朝の気分」では一転してさわやか路線に救われます。滑稽なピッコロやスネアドラムが楽しい「アラビアの踊り」、ピッツィカートが幻想的な雰囲気を醸し出す「アニトラの踊り」と続き、最後は切なく美しい旋律が余韻を残す「ソルヴェイグの歌」。このドラマティックな劇音楽を井上マエストロはよりいっそう表情豊かに彩っていきます。OEK&KBもいきいきとそれに応えます。

ペールギュントの最後は消え入るように終わりました。井上さんはこれで終わってもいいのだけど・・・と言いながらも、最後にもう1曲アンコールを。スーザの行進曲「海を越える握手」です。まずOEKの人たちだけが演奏し始めたのですが、井上さんがなにやらぶつぶつとダメ出しし、何度かやり直した挙句、KBの方々がすっくと立ち上がり代わって演奏を始めました。そしてやがてOEKのみなさんも再び加わり大合奏に。行進曲は心も踊ります。これ手拍子したいなあ~~?と思っていたところ、ミッキーが振り向き手拍子を促してくれました。聴衆の温かい手拍子に包まれて楽しく締めくくりました。

スーザ「海を越える握手」


オーケストラ・アンサンブル金沢
第247回定期公演フィルハーモニー・シリーズ

日時:2008年9月18日(木)19:00開演
会場:石川県立音楽堂コンサートホール
指揮:井上道義 Michiyoshi Inoue
ヴァイオリン:ギドン・クレーメル Gidon Kremer
ゲスト・オーケストラ:クレメラータ・バルティカ Kremerata Baltica
管弦楽オーケストラ・アンサンブル金沢 Orchestra Ensemble Kanazawa
コンサート・マスター:サイモン・ブレンディス Simon Blendis

《指揮:井上道義オーケストラ・アンサンブル金沢
シベリウス J.Sibelius
 組曲「カレリア」作品11 "Karelia" Suite op.11

  間奏曲 Intermezzo
  バラード Ballade
  行進曲 Alla marcia


《指揮:井上道義/クレメラータ・バルティカ&オーケストラ・アンサンブル金沢
シベリウス J.Sibelius
 ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47 Violin Concerto in D minor op.47

  第1楽章 アレグロ・モデラート 1. Allegro moderate
  第2楽章 アダージョ・ディ・モルト 2. Adagio di molto
  第3楽章 アレグロ・マ・ノン・タント 3. Allegro, ma non tanto

  ~ヴァイオリン独奏:ギドン・クレーメル Gidon Kremer


(アンコール)
《指揮:井上道義/クレメラータ・バルティカ&オーケストラ・アンサンブル金沢
■スヴェンセン: J.Svendsen
 ヴァイオリンとオーケストラのためのロマンス 作品26 Romance for Violin and Orchestra, op.26

  ~ヴァイオリン独奏:ギドン・クレーメル Gidon Kremer


---休憩---


《クレメラータ・バルティカ》
グリーグ E. Grieg
 ホルベルク組曲(ホルベアの時代から)作品40 Holberg Suite op.40

  前奏曲 Praludium
  サラバンド Sarabande
  ガヴォット Gavotte
  アリア Air
  リゴードン Rigaudon


《指揮:井上道義オーケストラ・アンサンブル金沢&クレメラータ・バルティカ》
グリーグ E. Grieg
 劇音楽「ペール・ギュント組曲より Peer Gynt Suite

  花嫁の略奪と嘆き The Abduction
  山の魔王の宮殿にて In the Hall of the Mountain King
  オーゼの死 The Death of Aase
  朝の気分 Moring Mood
  アラビアの踊り Arabian Dance
  アニトラの踊り Anitra's Dance
  ソルヴェイグの歌 Solveig's Song

(アンコール)
《指揮:井上道義オーケストラ・アンサンブル金沢&クレメラータ・バルティカ》
■スーザ John Philip Sousa
 海を越える握手 Hands across the Sea