かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

【OEK定期246M】岩城宏之メモリアル・コンサート

いよいよOEKの2008-2009シーズンが始まります。今シーズンからフィルハーモニー・シリーズに加え、新たにマイスターシリーズでも定期会員になり、しかも2階最前列という好位置の座席を確保できました。

仕事を終えて音楽堂に到着したのは、ホワイエで行われていた弦楽四重奏のプレコンサートが終わる頃でした(何という曲だったのでしょうか?)。演奏終了後、リーダーの竹中のり子さんが挨拶し、ウィーン国立音楽大学大学院への留学とその間OEKを休団する旨ご報告。先日活動を終了したアルバン・ベルク四重奏団のリーダーヴァイオリニストで、OEK名誉アーティスティック・アドバイザーでもあるギュンター・ピヒラー氏に師事するそうです。すごいですね~~! 留学後はOEKに復団していただけるようですので、パワーアップした竹中さんを心待ちにいたしましょう。

三枝成彰さんと池辺晋一郎さんの漫才のようなプレトークと(三枝さんは1942年、池辺さんは1943年生まれ。若く見えるけど三枝さんの方が年上!)、岩城宏之音楽賞表彰式の後、いよいよ演奏会が始まりました。

まずは三枝成彰氏による新曲「イカの哲学」です。「イカの哲学」・・・このタイトル自体がそもそも謎なのですが(苦笑)、これは三枝氏と親交のある哲学者・中沢新一氏の著書「イカの哲学」を音楽で表現する試みでありました。もともとは、特攻隊の生き残りでソ連に抑留された後、米スタンフォード大学へ留学して哲学を学んだ波多野一郎という人がいたのですが、この在野の哲学者がイカの加工工場でアルバイトをした際の体験から着想して「烏賊の哲学」という著書を発表したのです。そして、この作品を学生時代から注目していた中沢氏が最近これを復刻し、分析や論考を加えて刊行したというわけです。

イカの哲学 (集英社新書 0430)
イカの哲学 (集英社新書 0430)中沢 新一

おすすめ平均
stars他の生物に”配慮”ができるのが人類
stars波多野一郎の生涯に、限りない重さを感じる。
stars中沢平和論のはじめの一歩
stars全ての生物の「実存」の極みから絶対的平和=日本国憲法第9条を基礎づける
stars憲法9条(9)+中沢新一(1)=イカ(10)の哲学

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イカ加工工場での作業においては、一疋一疋のイカがそれぞれ今までどのように生きてきたかといったイカの「実存」などというものは考えません。そのことに気づいた波多野氏は、人間同士の戦争というのも、互いの生命の「実存」について相互理解が欠如しているから起こるのだということに思い至りました。あらゆる生命の実存を理解することこそが、戦争に対する最大の抑止力になりうる――中沢氏は、こうした波多野氏の思想を紹介し、分析・評価し、新たな世界平和を論じます。

タイトル名とは裏腹に、なかなかに高尚な内容だったのですが、三枝さんが作曲したこの楽曲は、劇的でエキサイティングなものでした。木村かをりさんのピアノ独奏による協奏曲形式ですが、バリトン歌手の薮内さんによる朗読がこれに加わります。冒頭いきなり薮内さんの「イカは!」という一声が発せられ、間髪を入れずオーケストラの力強い演奏が始まります。木村かをりさんの超快速ピアノ連打も見事です。そして、音楽に合わせて、時には単語をひとつひとつ刻みつつ、薮内さんによる朗読が乗せられていきます。当初は中沢氏ご自身がナレーションを担当する予定だったのですが、かなり複雑なオーケストレーションでしたので、朗読のタイミングを合わせるのはやはり音楽家でないと絶対無理だったでしょう。バリトン歌手の起用は正解でした。また、正座しての拍子木打ちオーケストラ団員による足踏み(笑)など、見どころは満載でした。

続いては、第2回岩城宏之音楽賞受賞者、荒井結子さんによるハイドンのチェロ協奏曲第2番です。6-4-4-2-1の弦5部に、オーボエとホルンが各2という楽器構成。この曲は一時はハイドンの作ではないとされていたというくらい先進的な技巧がふんだんに登場するのですが、旋律もひじょうに美しくお気に入りの1曲です。OEKが柔らかく優しく演奏した提示部に続き、荒井さんがより装飾的な独奏を堂々と披露しました。若くボーイッシュな荒井さんはその容貌のイメージ通り、颯爽とした演奏っぷり。演奏後の恒例(?)、井上さんからのヒーローインタビューのときはさすがにぐったりしていた様子。でも、緊張もあったでしょうが、充分「男前」でした。

ハイドンのチェロ協奏曲第2番といえば、僕の愛聴版はロストロポービッチが超ロマンティックに弾いているやつなのですが、マエストロ井上が藤原真理さんとの共演で録音されたCDというのがありまして、これにも興味があります。値段は大して高くないので、ついポチっとクリックしてしまいそうですが、いつかアマゾンで文庫本1冊だけ欲しいのだけどそのままじゃ送料がかかってしまいそうなときにいっしょにポチっとクリックし、1,500円以上購入で送料無料の条件を満たしたいと思います。

ハイドン:チェロ協奏曲第2番ハイドン:チェロ協奏曲第2番
ハイドン ボッケリーニ 井上道義

曲名リスト
1. チェロ協奏曲ニ長調 作品101 Hob.7b-2 1-Allegro moderato
2. チェロ協奏曲ニ長調 作品101 Hob.7b-2 2-Adagio
3. チェロ協奏曲ニ長調 作品101 Hob.7b-2 3-Allegro
4. チェロ協奏曲変ロ長調 1-Allegro moderato
5. チェロ協奏曲変ロ長調 2-Adagio non troppo
6. チェロ協奏曲変ロ長調 3-Rondo:Allegro

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休憩。携帯でドラゴンズの途中経過をチェックしつつ、おお、三枝氏やら中沢氏が間近にいるなあ、と俗っぽいところで感動したりしつつ、SS席シリーズ購入者特典のドリンク券を使いうきうきとコーラを注文して一服。

現代作曲家による先鋭的協奏曲の世界初演、新進音楽家が演奏する古典派協奏曲に続いて、後半は、古典派交響曲の王道、ベートーヴェン交響曲第1番。まだハイドンモーツァルトの影響下にあると評されるこの曲ですが、そこかしこにベートーヴェンらしい知的さ崇高さが感じられます。ドラマティックな第4楽章。井上さんによりオケはいっそう快速に走り、心地よいグルーヴ感が増幅していきました。

アンコールはNHK大河ドラマ「篤姫」のメインテーマ。テレビで流れているのは当然N響の演奏ですが、井上さんが指揮しているので、いつかOEKでも演奏しないかな~と思っていたところ、今回やってくれました。毎週耳にしてすっかりなじんでいるこの曲、最後に低音の金管トロンボーン?)が下がりながら響かせるフォルティシモは、逆に弦だけで軽くふんわりと演奏されていました。アンコールの余韻にふさわしいアレンジでとても良かったと思います。

「篤姫」オリジナルサウンドトラック
「篤姫」オリジナルサウンドトラック吉俣良

おすすめ平均
stars120点!!!
stars癒しを求める方へ
stars第2弾(完全版?)を期待しています!!
stars大河のサントラ、恐るべし
stars非常に良い

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今シーズンの定期公演も満足いく形で幸先良く幕を開けました。また、来年の5月には、「モーツァルトと仲間たち」をテーマとして「ラ・フォル・ジュルネ金沢『熱狂の日』音楽祭2009」が開催されることがこのたび決定しました。これから1年、存分に堪能したいと思います。

オーケストラ・アンサンブル金沢
第246回定期公演マイスター・シリーズ
岩城宏之メモリアル・コンサート

日時:2008年9月10日(水)19:00~
会場:石川県立音楽堂コンサートホール
指揮:井上道義
コンサートミストレス:アビゲイル・ヤング

三枝成彰
 ピアノ協奏曲「イカの哲学」(2008年度新曲委嘱作品・世界初演
 ~ピアノ:木村かをり
  朗読:薮内俊弥
  台本:中沢新一

ハイドン
 チェロ交響曲 第2番 ニ長調 Hob.VII b-2
 ~チェロ:荒井結子 《第2回岩城宏之音楽賞受賞者》

---休憩---

ベートーヴェン
 交響曲 第1番 ハ長調 op.21

(アンコール)
吉俣良
 NHK大河ドラマ篤姫」メインテーマ