かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

【OEK定期393PH】井上道義×神尾真由子のベートーヴェン(2017/9/20@石川県立音楽堂 コンサートホール)

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 オーケストラ・アンサンブル金沢「2017−2018シーズン」の始まりです。井上道義音楽監督は2018年3月末での退任が決まっており、OEK音楽監督としての井上さんの指揮が聴けるのはあとわずか3回。シーズンのスタートとなる本公演はそのうちの貴重な1回です。

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しかも、客演は神尾真由子さんというビッグネーム。先月のIMA20周年記念公演でのメンデルスゾーンに続いて、今度はベートーヴェンのコンチェルトを演奏します。 

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開演前のロビーコンサートは、OEKの四人のチェロ奏者による四重奏。ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団首席チェロ奏者だったユリウス・クレンゲル作曲の「即興曲」を演奏しました。静かな出足から徐々に盛り上がり、突如としてメンデルスゾーンの「結婚行進曲」のフレーズで終了。じつはソンジュン・キムさんが先日結婚式を挙げ(お相手はOEK第2ヴァイオリンの若松みなみさん)、そのパーティの際にチェロ四人でこの曲を演奏したそうです。おめでとうございます。

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さあ開演。1曲めはペルト「ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌」。ステージ裏からベルが鳴る中、静謐で神秘的な弦楽合奏が繰り広げられました。

そして神尾真由子さんの登場。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲です。井上さん指揮のもとゆったりとしたテンポで曲が進みます。いよいよ神尾さんの独奏、最初はかなり不安定…というか硬い感じでしたが(メンデルスゾーンのときもそうだった)、徐々にノッて鳴り出しました。

ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲といえば、メンデルスゾーンチャイコフスキーのような超絶技巧を見せつける感じではなく、イメージとしては比較的平坦な旋律を淡々と弾いていくというもので、逆にそれゆえの難しさがあると言われています。神尾さんのベートーヴェンは初めてだったので、どのように弾くか興味津々でありました。

すると…

こんなベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は初めて聴いた!!というオドロキがとまりませんでした。情緒的…を遥かに超えて「劇場的」とでも申しましょうか、神尾さんがひとりでソプラノとアルト、テノールバリトンを唄ってるかのような感覚、まるでオペラを観ているかのような興奮を覚えたのでした。まさに唯一無二の個性を放つ、目を離すことのできないヴァイオリニストであります。だからついつい追いかけたくなるのです。

後半は「田園」。第1楽章からまさに田園風景がふわっと目に浮かぶような丁寧な演奏。第3楽章からピッコロ、トランペット2、トロンボーン2、そしてティンパニがステージに加わり、さまざまな自然の顔が描写されていきます。そして終楽章に向かい、井上さんが自然の歓びをたっぷりと浴びせて大団円。思えばはじめてOEK定期公演に来たときのプログラムは田園でした。(指揮は金聖響)。それ以降、何回も聴いているこの名曲ですが、井上さんの田園もやっぱり素晴らしかったです。堪能させていただきました。

オーケストラ・アンサンブル金沢
第393回定期公演フィルハーモニーシリーズ

2017年9月20日(水)19:00開演
石川県立音楽堂 コンサートホール

指揮:井上道義
ヴァイオリン:神尾真由子

■ペルト:ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌(1977/1980)
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
ベートーヴェン交響曲 第6番 ヘ長調「田園」作品68