NHK「ひよっこ」シシド・カフカさんの久坂早苗
NHK朝ドラ「ひよっこ」第69話(2017/6/21(水)放送)は、みね子(有村架純)の暮らすアパート「あかね荘」の住人で、漫画家をめざす新田啓輔(岡山天音)のもとに、相棒・坪内祐二(浅香航大)がようやく帰還した話でした。
正月に富山へ帰省したきり連絡の途絶えた間、その経緯を、住人たちは要領の得ない説明にイライラしながらも祐二に問いただします。最後はみね子がはじめて彼らの漫画を読む破目となり、そのつまらなさに同情のウソ笑いと哀れみの涙を流し、ふたりの漫画家たちに見事感動されて、すなわち誤解されて終わりました。
それにしてもこの回は、最後のナレーションにもあったように、「あかね荘」の中、それも坪内祐二&新田啓輔コンビ(「つぼ田つぼ助」)の一室だけの会話劇で終わりました。アパート住人それぞれの個性が際立つからこそ成立する回ですね。
その中でもとりわけおもしろかったのは、祐二たちに対する、1号室住人・久坂早苗(シシド・カフカ)の傷口をえぐるようなクールな問いただしよう。見事なツンぶりでありましたね。
私がシシド・カフカさんを初めて知ったのはドラマ「視覚探偵日暮旅人」。超ドSな無軌道刑事を演じ強烈なインパクトを与えてくれました。もともとはドラムミュージシャンなのですね。
そういえば「ひよっこ」脚本の岡田惠和さんが以前脚本を書いた朝ドラ「ちゅらさん」でも、主人公の恵里が暮らすアパート「一風館」の群集劇がとても楽しかったのを思い出しました。
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この一風館も個性的な住人たちばかりでしたが、その中で恵里と最も絡んでいて印象深いのが、菅野美穂が演じるメルヘン小説家の「城ノ内真理亜」。ひねくれ者というか皮肉屋というか、真理亜さんは恵里に対してしょっちゅう憎まれ口を叩くのですが、お気楽な恵里のペースに巻き込まれ、じつはそれもまんざらでもない感じなのです。
そのポジションが何か「ひよっこ」の早苗さんに通じるものがあるなあと思い至ったのでした。そしたら似たようなことを指摘した記事を発見。おおいに膝を打ったものです。
今回のあかね荘を見たときに感じた既視感の原因は、この一風荘に他ならない。『ちゅらさん』で一風荘での群像劇が見事に機能したように、あかね荘の住人も大いに活躍してくれるはず……そんな期待が高まったのだ。それと同時に、一風荘を思い出してハッとしたことがある。『ちゅらさん』における一風荘の住人、城之内真里亜(菅野美穂/39)が、『ひよっこ』の早苗(シシド)にそっくりなのである。
ヒロインにキツく当たり、いつもなんだか機嫌が悪い。でも実はヒロインを思っている姉貴的な存在など、すでにたくさんの共通点がある。城之内(菅野)が『ちゅらさん』にたくさんの涙、笑いをもたらしたように、早苗(シシド)もドラマのキーマンになるだろう。
そして、管理人住み込みのアパートが舞台の物語といえば、思い出すのはなんといっても高橋留美子「めぞん一刻」でしょう。
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「一刻館」の管理人・音無響子と住人・五代裕作のラブコメディ。一刻館は、噂話と宴会が好きな一の瀬のおばさん、空気が読めず面倒くさい二階堂くん、謎の紳士四谷さん、裸同然の六本木朱美さんらキャラ濃すぎる住人たちばかりでした。
その中には早苗さん的なポジションはないのですけど、一刻館の住人ではなく、五代くんの大学の同級生に「黒木小夜子」という登場人物がいました。その女性の雰囲気とビジュアルが、シシド・カフカさんにそっくりなのです。
大学では人形劇クラブに属し、卒業後は保育園に勤務する子ども好き。就職浪人となった五代くんに保育園のバイトを斡旋するなど、見た目はクールだがじつは情に厚いというのもどうも共通してるように思えます。
というわけで、ドラマ上まことに絶妙なポジションに存在するシシド・カフカさんの久坂早苗から目が離せないのであります。