かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

【OEK定期302PH】OEK初登場リープライヒが魅せる ヨーロッパの潮流(2011/05/25@石川県立音楽堂コンサートホール)

この日のOEK定期公演は、図らずも「追悼」音楽の特集となりました。この公演のプログラムは1年以上も前に決まっていたのですが、まさか現にこれほど甚大な被害をもたらした大震災が起こるなんて…。偶然の一致とはいえ、気持ちが引き締まります。指揮はドイツ人指揮者アレクサンダー・リープライヒさん。OEK定期初登場です。

1曲目はエストニアの現役作曲家・ペルトの「レナルトの追憶に」。2006年に亡くなったレナルト・ゲオルク・メリ前エストニア大統領の追悼作品です。静謐で重厚な弦楽合奏曲。

2曲目は管・打楽器が加わってハイドン交響曲。これが何故に追悼?とおもいきや、この98番はモーツァルトの死の直後に作曲され、モーツァルトに対する追悼の想いが込められているとのこと。面白かったのは、弦が対向配置に入れ替わり、管・打楽器含め、チェロ以外の全員が起立して演奏したこと。対向配置はまあハイドンだからわかるのですが、全員が起立するというのはあまり知りません。ノンヴィブラート奏法が採用され、また、わざわざ対向配置にしたことも考え合わせると、当時の演奏スタイルがそのようであって、それを再現しようとしたのでしょうかね? あるいは、この日のノンヴィブラート奏法は「歯切れがのいい」というのとは違う、凍り固まった氷柱をスカっとと送り出すような?とてもダイナミックで、なにか不思議な感じに聴こえたのですけど、そういったダイレクトな効果を狙ったもの、より音が通るようにという思惑だったのかもしれません。でも、ナンダカンダ言っても、やっぱりハイドンは楽しいなあ。

後半最初はルトスワフスキ弦楽合奏によるバルトーク追悼の葬送曲。全員に譜面台が与えられ、つまり全員が別パートを演奏するという複雑な構成の曲。バルトークの緻密な構成力を彷彿とさせます。曲はチェロで始まり、中間部はこれが追悼曲なのかと疑うくらいスリリングなやりとりがなされ、最後はカンタさんのチェロで消え入るように終わります。

最後はハルトマン。交響曲といいつつ前曲に引き続き弦楽のみの合奏。この曲は第二次世界大戦の犠牲者に対する追悼の音楽とのこと。ユダヤ系のハルトマン自身もナチス批判を展開して不遇な時代を過ごしたそうなので、曲にこめられた思いは格別なものがあったことでしょう。3楽章からなる楽曲は事あるごとに不協和音が支配し、不安感緊張感が煽られます。

今日はハイドン以外は聴き馴染みのない現代音楽が中心でしたので、楽しげとか心地良いといった感情とは違う種類の音楽でした。面白いことは面白いのですけどね。集中して聴いていたら、はっきり言って重々しくて疲れちゃいました…(苦笑)。



オーケストラ・アンサンブル金沢 Orchestra Ensemble Kanazawa
第302回定期公演フィルハーモニー・シリーズ
The 302nd Subscription Concert / Philharmonie-serie

日時:2011年5月25日(水)19:00開演 Wednesday, 25 May 2011 at 19:00
会場:石川県立音楽堂コンサートホール Ishikawa Ongakudo Concert Hall
指揮:アレクサンダー・リープライヒ Alexander Liebreich, Conductor
管弦楽オーケストラ・アンサンブル金沢 Orchestra Ensemble Kanazawa
コンサートマスター:アビゲイル・ヤング Abigail Young, Concertmaster

■A.ペルト Arvo Part (1935-)
 レナルトの追憶に
 For Lennart

■F.J.ハイドン Franz Joseph Haydn (1732-1809)
 交響曲 第98番 変ロ長調 Hob.I-98
 Symphony No.98 in B flat major, Hob.I-98

--- 休憩 Intermission ---

■W.ルトスワフスキ Witold Lutos?awski (1913-1994)
 葬送曲(バルトークの思い出のために)
 "Musique funebre", a la memoire de Bela Bartok

■K.A.ハルトマン Karl Amadeus Hartmann (1905-1963)
 交響曲 第4番
 Symphony No.4