かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

【映画】ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人(2011/2/21@シネモンド)

ニューヨーク在住の老夫婦、元郵便局員のハーブと元図書館司書のドロシーは、現代アート界きっての有名コレクター。決して多くない稼ぎの中から、有名無名問わず、自分たち自身の審美眼に適ったアーティストの作品をコツコツと買い集めて30数年。4000点を超えるコレクションは、夫婦が住むアパートの収容能力をはるかに超え、全米の美術館に寄贈されることになりました。そんな「現代アート一筋」なハーブ&ドロシー夫妻の日常を追ったドキュメンタリ作品です。

NY屈指の現代アートコレクターといっても、ハーブ&ドロシー夫妻は金持ちでもないし、スタイリッシュでもありません。たとえば彼らのアパートは生活感にあふれていて、スマートでクールな現代アートとは程遠い、どちらかといえば野暮といってもいいくらいの庶民的な暮らし向き。それでも、現代アート界にバブルが訪れたときも、収集したコレクションを売却して利益を得ようという発想はありません。彼らは純粋に「好きだから」作品を買い求めたにすぎないのであって、のちにその作者が有名になったとしても、あるいは自分たちのコレクションに高値がついたとしても、アート作品を愛でる無垢な姿勢が変わることはありませんでした。

しかも、そういった現代アートに対する愛情を、夫婦そろって持ち続けていること、しかも、ふたりがともに同じくらいの大きな情熱を傾けているということは、ある意味奇跡的ともいえるのではないでしょうか。ふたりがまったく自然に手をつなぎ、嬉々としてギャラリーをハシゴする姿は、見ていてまことに微笑ましく、崇高ですらありました。

心から深く現代アートを愛している夫婦の、心温まる素敵なドキュメンタリでございました。

★★★★