かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

【映画】ノルウェイの森(2011/1/3@ユナイテッド・シネマ金沢)

言わずと知れた村上春樹ベストセラー小説の映画化。この小説が発表された1987年当時、ぼくは大学生でした。チャラ系サークルに顔を出しつつ夜のアルバイトに明け暮れ、ほとんど本を読まなかったのですが、そんなバカ学生でもこの本は自分で買って読んだのです。こうして普段本を読まない連中までが買っちゃうからこそ、社会現象になるくらい爆発的に売れたというわけですね。そういえば、大学の時に知り合った友人のCMプロデューサーK君はそれ以前から村上春樹のファンで、初期三部作(「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険(上)(下)」)は彼から借りて読んだ記憶があります。もっとも、その三作については今となってはすっかり内容を忘れており(汗)、他方「ノルウェイの森」は、えらいものであらすじはそれなりに覚えているのです。作品の力というか、さすがにベストセラーになるだけのことはありますね。とはいえ、あくまで「それなりに」覚えている程度であって、実は細かい部分はすっかり忘れています。とりたてて作者のファンでもないし、繰り返し読むほどには原作に思い入れがあるわけではありません。

…とまあ、原作に関する知識や思い入れは、この程度の中途半端さです。で、これくらい「そこそこに」原作に接したことがある者が、予告編を見て俄かに胸をざわつかせ、映画化された作品を観に行ったわけですが、感想としては、かなり満足できました。キャスティングもイメージに近く、ロケ地や音楽も作品の雰囲気に合ってたと思います。

もっとも、これは「そこそこに」原作を知る人だからこその感じ方だと思われます。つまり、この映画は原作をまったく知らない人が観ると、単に「主人公がセックスしまくり、周りの人が次々と自殺していく」という実も蓋もない話(笑)としか捉えられないような気がします。それくらいさしたる脈略もなくあっさり性行為が始まり、しかもやたら長時間しつこく続くのです。その割には露出も少なくたいしてエロくもない(苦笑)。ところが、ぼくのような「そこそこに」原作を知る者としては、たしか彼と彼女の間には、その行為に至る重要なプロセスがあったはず…という記憶だけはあり、その程度の脳内補完をおこないつつ観る限り、決してそのセックスシーンは脈略のないものではないのです。

他方、原作をこよなく愛する人にとっては、そういった「重要なプロセス」をたぶん細部まで明確に覚えていて(しかも相当な思い入れを抱いていて)、そういう大事なシーンが根こそぎ省かれているため、たまらなく嫌悪感を抱くだろうなあと想像されます。おそらくさぞかし軽薄で表層的な表現にとどまることと感じていることでしょう。それに比べて「そこそこに」原作を知る者は、具体的にどういったエピソードだったかはすっかり忘れているので、それについての不満は生じない、という(苦笑)。

映画鑑賞後、ネットの評判を見る限り、とりわけ原作ファンがその薄っぺらさにがっかりしているようすがみてとれます。逆に言えば、それだけ原作の世界が深いのだろうと思われます。うーん、原作を読み直したくなったなあ。…というわけで、結論。「そこそこに」原作に接したことがある者が、映画を観てその世界観を軽ーく味わった後で、原作を再読すると最もこの作品を楽しめるのではないでしょうか(笑)。

★★★

B0047T7QXOノルウェイの森  上下巻セット (講談社文庫)
村上 春樹
講談社 2010-11-05

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