かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

【アジア民族音楽フェスティバル2010】ハオチェン・チャン ピアノリサイタル(2010/11/03)

11月3日の文化の日、石川県立音楽堂で「アジア民族音楽フェスティバル」というイベントが開催されました。金沢駅コンコースでの無料ステージのほか、邦楽ホールと交流ホールで日本・韓国・中国・台湾のアーティストによるさまざまな有料ステージが披露されます。というわけで、3000円の一日パスを購入して、朝からチョコチョコ聴いて回ることにしました。

そういえば昨年も10月に「金沢アジア祭2009」という音楽イベントが開催されてましたね。たしか、プッチーニのオペラアリア(トゥーランドット蝶々夫人)や、韓国人チェリストサン=サーンス、OEKと中国琵琶の協奏などを聴いた覚えがあります。なぜかブログ記事には残してないのだけれど…(汗)。

で、話は戻って今年の「アジア民族音楽フェスティバル」です。まずは交流ホールにて二胡(李彩霞さん)、チェロ(OEK首席:ルドヴィート・カンタさん)、ピアノ(清水史津さん)のアンサンブルによる中国音楽。二胡の響きは好きなんですが、なぜかPAを使用していて(しかも雑音がひどい)おおいに興醒め。生音で充分聞こえるのに…! 続いて邦楽ホールにて中国大黄河雑技団によるパフォーマンス。こちらは演技者の妙技を無条件で楽しめました。ふたたび交流ホールに戻り、コリア伝統芸音集団「風花」による民俗舞曲。独特の伝統楽器を演奏するのですが、やはりこれもPAを使用。しかも独奏といいつつ録音された伴奏が流れるとか意味が分からない。運営がかなりまずいなあと感じました。というわけで、次の公演に備えてプログラム半ばにして早々に退散。

で、この後、邦楽ホールで行われるのが「ハオチェン・チャン ピアノリサイタル」です。これこそが個人的には「アジア民族音楽フェスティバル」の大本命、最大のお目当てなのであります。ハオチェン・チャンさんは、2009年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで、あの辻井伸行さんと優勝を分け合った20歳の中国人ピアニスト。さすがに聴衆の期待も大きいらしく、会場はほぼ満席。ぼくは前のコンサートを途中退席したおかげ(?)で、幸い2階最前列の座席を確保できましたが。ε-(´∀`*)ホッ

開演時間となり、ハオチェンさんが登場。プログラムの写真よりちょっとオトナびています。さすが成長期。まずはショパンです。24のプレリュード全曲。…ああ、実にいいですねえ。ひとつひとつの音がすごくキレイ。いや、キレイというだけでなく、とても丁寧で正確。激情に走りすぎることなく、あくまで品格を保っていて。偶然にして先日の庄司さんの演奏にも相通ずることですけど、楽譜に真摯に向き合って、その世界を突き詰めて、一音一音を大事に表現しているという姿勢がひしひしと伝わってきます。しかも、その研ぎ澄まされた集中力が硬直して聴衆に伝播するのでは決してなく、あくまで印象はやわらかく上品に…。さすがこれこそがヴァン・クライバーン優勝者の演奏なのだなあ…!まったく納得です。なお、同時優勝者である辻井さんのショパンは、ストレートに感情を表出する情感型。これはこれで楽しめましたが、ハオチェンさんの真摯なアプローチとその美しい音色にはよりいっそう好感を持ちました。

これに対して、次のヒナステラ。先ほどのショパンから一転して、激しく力強い演奏…! アルゼンチンの作曲家による近代的なピアノ・ソナタは、プロコフィエフあたりを連想させるような激しくリズミカルな打鍵が心を強く揺さぶります。ハオチェンさんは、先ほどとは別人かと思わせるような圧倒的な迫力で、ぐいぐいと曲を推進させていきます。しかし、それでも彼特有の音の美しさは失われていません。超絶技巧も抜群。これは素晴らしい…!! ショパンとは違う引き出しを持ち、表現の幅広さを見せ付けてくれました。

そしてアンコールは再びショパンノクターン20番遺作。端正なショパン、劇的なヒナステラと来て、最後は美しく透き通ったショパン。定番曲ではあるけれど、これは、やられた…! 素晴らしい、実に素晴らしい。

天才の煌きを、この会場の聴衆は目の当たりにしたことでしょう。関係者の目にも留まり、近いうちにまた金沢に呼ばれる気がします。単独リサイタルか、OEKとの共演か…。非常に楽しみな若者の出現にワクワクしたリサイタルでした。


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13th Van Cliburn Competition: Gold Medal13th Van Cliburn Competition: Gold Medal
Haochen Zhang

曲名リスト
ストラヴィンスキーペトルーシュカからの三楽章
ショパン24の前奏曲 Op.28
・メーソン・ベイツ:ロマックスへの他愛ない嘘
・リスト:スペイン狂詩曲

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アジア民族音楽フェスティバル2010 Asian Ethnic Music Festival 2010
ハオチェン・チャン ピアノリサイタル Haochen Zhang Piano Recital

日時:2010年11月3日(水・祝)12:30開演 Wednesday, 3 November 2010 at 12:30
会場:石川県立音楽堂邦楽ホール Ishikawa Ongakudo Hougaku Hall

ピアノ:ハオチェン・チャン Haochen Zhang, Piano

■F.ショパン Frederic Chopin (1810-1849)
 24のプレリュード(前奏曲集)作品28
 24 Preludes op.28

■A.ヒナステラ Alberto Ginastera (1916-1983)
 ピアノ・ソナタ 第1番 作品22
 Sonata para piano No.1 op.22

(アンコール Encore)
■F.ショパン Frederic Chopin (1810-1849)
 ノクターン 第20番 嬰ハ短調(遺作)
 Nocturne No.20 in C-sharp minor, op.posth.