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かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

【OEK定期278M】「コンチェルトオー!」~トランペット少年シメオ!カンタさんによるグルダのチェロ協奏曲!そして驚きの飛び入りアンコール!(2010/03/21)

今回の定期公演は、井上監督が振る協奏曲5連発!しかも時代がバロック・古典もしくは現代という、極端な組み合わせのおもしろいプログラムです(お客さんの入りはイマイチでしたが…)。

まずはヘンデルの合奏協奏曲。OEKよりヤングさん、江原さん、大澤さんが独奏を担当。すっきりとしつつ厚みも感じられ、OEKの持ち味がよく出る楽曲だったと思います。

続いてはトランペットのシメオくんが登場。まだ10代の少年ですが(顔つきも外国人としては幼い)、トランペットの音色は実にまろやかです。ステージでの振る舞いも落ち着き払っていて、まさに天才登場という感じでした。初めて聴いたタルティーニは健康的な印象。

アウエルバッハは旧ソ連出身の新進作曲家。以前OEKのコンポーザー・イン・レジデンスを務めていましたが、その任を退いたいまでも、彼女の楽曲はOEKの公演でもたびたび取り上げられています。今回の曲は全体的に暗く静かな曲で、ダウナーな気分の時に聴くととことん滅入る事ができるかもしれません(苦笑)。OEK弦4部の各首席奏者が舞台中央に円になるように立ち、ソリストを務めました。

休憩を挟んで後半はふたたびシメオ少年が登場。ハイドンを高らかに。まろやかで優しい音色の印象はそのままに、さらに加えて輝かしい響きを感じさせる気持ちのいい演奏でした。

そして最後の曲は、大注目のグルダ作曲チェロ協奏曲。グルダといえば巨匠ピアニストとしての名声が高いですが、作曲もしていたのですね。この曲は以前「OEK室内楽シリーズ もっとカンタービレ」でカンタさんが演奏し評判が良かったそうで、予習CDを購入して聴いてみたところ、なるほどとても面白い曲! そして今回、おそらく井上さんの演出意図が多分に反映された実演を聴いて(見て)さらに面白さが倍増しました。

楽器構成は木管金管コントラバスウッドベース風?)、ドラムセット。そしてギターとチェロはPA付きです。カンタさんは燕尾の上着にTシャツとGパン。

第1楽章「Overture 序曲」は、ディスコロックのリズムでスタート。照明がパッと艶めかしく赤く灯り、ひそかに天井に吊るされていたミラーボールが回り始めました(!!!)音楽堂がディスコに?? リズムに乗る井上さんのドヤ顔!(笑) カンタさんのチェロがエレキギターの早弾きのような技巧バリバリのメロディを奏で、ブラスセクションが賑々しく合いの手を入れます。ロックというより、70年代歌謡曲風と言ったほうがいいかもしれません。ところがやがてふっと曲調が変わり、木管セクションによる明るく落ち着いたパートに。カンタさんのチェロもやさしい旋律でまったり…と思いきや、照明が変わりふたたびディスコ!!これが何度か繰り返されて驚愕興奮の第1楽章を結びました。

第2楽章「Idylle 牧歌」は一転、木管を中心とするゆったりとした三拍子。カンタさんのチェロが優しく寄り添い、まさに牧歌。照明は緑。

第3楽章「Cadenza カデンツァ」。特異な技巧を駆使した無伴奏のチェロ独奏楽章。照明が落とされカンタさんだけにピンスポットがあたります。冒頭こそバッハを思わせる重厚な旋律ではじまりますが、やがて弦を激しく弾いたり滑らせたり、エレキギター的な奏法が次々と登場します。とはいえ浮ついた感じは一切せず、むしろ武道に相通ずるほどの緊張感に満ちていました。完全にカンタさんの独壇場で、目を耳を凝らさずにはいられませんでした。

第4楽章「Menuett メヌエット」。民俗的な匂いのするのどかな舞曲。哀愁漂うギターが意外に暖かく、さきほどの緊張がほどよくほぐれていきます。

…すると第5楽章で再びバーンと弾けます!!「Finale Alla Marcia 行進曲風のフィナーレ」!! 照明は鮮やかな黄色!井上さんがステージ全体に手を広げ、ジョッキをぐいぐい煽るジェスチャーをしています。そう、ここはビアホール!! 吹奏楽部のようにブンチャブンチャッ!と底抜けの明るさ全開でマーチのリズムを刻みます。そしてチェロが高速パッセージをものともせず楽しくこの後を追います。賑やかなメロディがいくつか続いた後、カンタさんのキリッとした独奏をはさみ、ふたたびお祭り騒ぎの行進曲へ。井上さんは当然この時点でノリノリですよ!! 聴衆も手拍子で応え、チェロの高速上昇旋律とともに華々しくフィナーレ! ブラヴォーー!! カンタさん最高のパフォーマンスでした!!

興奮覚めやらぬ中、何度もカーテンコールが繰り返された後、井上さんが会場の客席から誰かを手招きしています。ジャズピアニストの小曽根真さんです! OEKはこのプログラムを持ってこの後全国ツアーに旅立つのですが、東京や名古屋など主だったところでは、アウエルバッハに代わって小曽根さんとシメオ少年によるショスタコーヴィチのピアノ協奏曲が演奏されるのです。金沢では小曽根さんのショスタコは聴けないのかーと残念に思っていたのですが、リハも兼ねて金沢に来ていらした模様。で、井上さんは彼を壇上に上げ、ピアノのセッティングを指示。カンタさんとシメオ少年をステージに呼び寄せ、「3人で何かやってよ!」井上さんのムチャぶりです(まあある程度は想定してたでしょうが)。すると小曽根さんは苦笑しながらもピアノの前に座り、ジャズっぽいメロディを奏ではじめました(後で聞くところによるとショスタコーヴィチの一節らしい)。そしてカンタさんが、ルシオ少年が、次々と自らの音を乗せていきました。井上さんも後ろで踊りだし(笑)、不思議な盛り上がりでアンコールが結ばれました。

いやあ!なんと楽しいプログラム! この時点ですでに2010年マイベストコンサートの筆頭候補といえましょう。それにしても客の入りが悪かったなあ…。たしかにOEKといえばウィーン古典~初期ロマン派が得意で聴衆もそれに慣れています。モーツァルトベートーヴェンのないプログラムは正直人気がない。でも、少なくとも井上さんの指揮ならば、金沢の人は知らない曲でも行ったほうがいい! と、ここに断言しておきます。

グルダ:チェロ協奏曲(抜粋:グルダ本人による指揮で)


グルダ:チェロ協奏曲(全曲)
1.Overture:
http://www.youtube.com/watch?v=Ludf3NPN3UY
2.Idylle:
http://www.youtube.com/watch?v=5Iu9a9pFdJU
3.Cadenza:
http://www.youtube.com/watch?v=ozUZ-23FhsE
4.Menuett:
http://www.youtube.com/watch?v=BiCFeOVto0E
5. Finale Alla Marcia:
http://www.youtube.com/watch?v=JSnygfTu9dw


オーケストラ・アンサンブル金沢 Orchestra Ensemble Kanazawa
第278回定期公演マイスター・シリーズ
The 278th Subscription Concert / Meister-serie

日時:2010年3月21日(日・祝)15:00開演 Sunday, 21 March 2010 at 15:00
会場:石川県立音楽堂コンサートホール Ishikawa Ongakudo Concert Hall
指揮:井上道義 Conductor: Michiyoshi Inoue
コンサートマスター:アビゲイル・ヤング Concertmaster: Abigail Young

ヘンデル G.F.Handel (1685-1759)
 合奏協奏曲 第12番 ロ短調 作品6-12
 Concerto grosso in b minor Op.6-12
 ~ヴァイオリン:アビゲイル・ヤング、江原千絵 Violin: Abigail Young, Chie Ebara
  チェロ:大澤明 Cello: Akira Osawa

■タルティーニ G.Tartini (1692-1770)
 トランペット協奏曲 ニ長調
 Trumpet Concerto in D major
 ~トランペット:ルベン・シメオ Trumpet: Ruben Simeo

■アウエルバッハ L.Auerbach (1973-)
 フラジャイル・ソリテュード(弦楽四重奏とオーケストラのための)
 Fragile Solitude - Shadowbox for String Quartet and Orchestra
 ~第1ヴァイオリン:アビゲイル・ヤング 1st Violin: Abigail Young
  第2ヴァイオリン:江原千絵 2nd Violin: Chie Ebara
  ヴィオラ:デルフィー・ティソ Viola: Delphine Tissot
  チェロ:ルドヴィート・カンタ Cello: Ludovit Kanta

-- 休憩 Intermission ---

ハイドン F.J.Haydn (1732-1809)
 トランペット協奏曲 変ホ長調 Hob.VII e-1
 Trumpet Concerto in E flat major Hob.VII e-1
 ~トランペット:ルベン・シメオ Trumpet: Ruben Simeo

グルダ F.Gulda (1930-2000)
 チェロとブラス・オーケストラのための協奏曲
 Concerto for Cello and Brass Orchestra
 ~チェロ:ルドヴィート・カンタ Cello: Ludovit Kanta

(アンコール Encore)
即興演奏 Improvisation
 ~ピアノ:小曽根真 Piano: Makoto Ozone
  チェロ:ルドヴィート・カンタ Cello: Ludovit Kanta
  トランペット:ルベン・シメオ Trumpet: Ruben Simeo