かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

のんちゃんのり弁

ダメ亭主に愛想を尽かし、娘の「のんちゃん」を連れて実家に出戻った小巻。自立した情勢を目指すものの、資格も経験もなく心構えも甘いアラサー女性に、すぐ仕事が見つかるほど世間は甘くありません。そんななか、のんちゃんのために作った「のり弁」が幼稚園で評判になります。小巻は一念発起して小料理屋さんに弟子入り。お弁当屋さんを開くことを決心します。

たしかに亭主のダラシなさは目に余るものの、主人公の小巻も、それに負けず劣らず言動がいちいち甘い。社会の壁にぶちあたり、師匠の叱咤を受け、そうして物語終盤、お弁当屋さん開店の朝、小巻がはっきりと一皮むけたことがわかります。小西真奈美さんの演技が見事です。そういう成長物語的な主題はしっかり描かれていたと思います。

残念なのは、いろんな味のご飯を幾層も重ね、美味しいと評判になるはずの「のり弁」が、さほど美味しそうに見えないこと。表面はのりで覆われて真っ黒になるため、その中身を上手に描写してあげる必要があるのですが、本作ではのり弁の断面をCGイラストの説明で済ませています。しかもそのイラストがあまり美味そうに見えない。各層のご飯を順に重ねていく過程をふつうに映像で映し出していけばよかったのにと思います。料理が悪いんじゃないと思いますよ。「かもめ食堂」「南極料理人」の飯島奈美さんがフードスタイリストを手がけているのですし、イタリア国旗風(表面がのりで覆い尽くされていない)のお弁当や、小巻が修行する小料理屋「ととや」の一品料理はどれも美味そうなので。にもかかわらず、肝心のお弁当の美味しさが伝わらないので説得力に欠けるわけです。

あと、食べ物はガツガツと食べる方がやはり美味そうに見えますね。「南極料理人」のように、たとえ料理に対する賛辞の言葉がなくとも、一心不乱にめしに向かい、ガシガシと口に運び続ける男たちの姿を見ると、激しく食欲をそそります。他方当作品では、のり弁を食べるのは幼稚園児(+若い女性)なので、ガツガツ食べるというには限界がありました。そこらへんも物足りなさのひとつだったかもしれません。

★★★

(2009/12/10@シネモンド)