かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~

太宰治の同名短編小説を映画化。生きることに苦悩し酒と女に溺れる作家の大谷は、行きつけの飲み屋「椿屋」で酒代を踏み倒し、果てには盗みを働いてしまいます。妻の佐知は夫の借金のカタに椿屋で働くことになったのですが、たちまち店の人気者に。大谷ファンだった常連客や、佐知が昔憧れていた弁護士ら、佐知に好意を寄せる男性が次々と現れます。日々輝きを増していく妻に対し、大谷の嫉妬は深まり、やがて愛人と心中を図ります…。

身勝手でだらしないダメんず夫の横暴に、ひたすら耐え忍び、それでもなお尽くす妻…というだけの陰惨な構図では必ずしもありません。妻の佐知は、夫の情けない行状にも明るくしなやかに、時にたくましく対処していきます。松たか子さんのその飄々/凛然とした立ち振る舞いは実に魅力的でした。浅野忠信さんもナイーヴなダメ作家を好演。さすがです。

あと、本筋からは逸れますが、佐知が働く「椿屋」さんの描写も印象に残りました。戦後の混乱期、工員などの労働者がドヤドヤと仕事帰りに訪れる中野の猥雑な飲み屋街。客あしらいのうまい美人の佐知さん(愛称「さっちゃん」)が、狭い店内を一升瓶を持ってくるくるとお酌に回ります。日本酒を飲めない僕ではありますが、あんな飲み屋でビールかチューハイで毎晩一杯やって帰りたいものです。

「ここは煮込みも美味いんですよ」という常連客の台詞。「煮込み」というメニューは金沢ではあまりお目にかかりませんが、東京ではわりとポピュラーな居酒屋料理であるそうで。亭主が煮込みを小鉢に取り分ける場面を見たら、たしかに食べてみたい!と思いました。スタッフロールを見たらフードコーディネートは「飯島奈美さん」。言わずと知れた「かもめ食堂」「南極料理人」の方ですね。納得~。

(2009/10/16@イオンシネマ金沢フォーラス)

★★★★