かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

ディア・ドクター

上映最終日のレイトでようやく鑑賞。評判に違わずいい映画でした。

過疎の山村に勤務する医師・伊野治が主人公。その伊野医師が、若い研修医を一人残して突然失踪するところから物語は始まります。村民から全幅の信頼を寄せられていた伊野医師が、なぜ失踪するに至ったのか。警察の捜査と過去の回想が交互に描かれるなかで、その真相が明らかになっていきます。

過去と現在をちょこちょこ切り替える手法は、ヘタをすると混乱するだけという場合もあります。しかし今作に関しては、現在シーンの狂言回し的存在としての刑事役に、強烈な存在感を持つ松重豊さんを配したことによりその切り替わりが明確となり、まったくそんな問題はありませんでした。むしろ、伊野医師失踪の前後で、各登場人物の心境の対比が鮮明となっていて、効果的だったと思います。セリフを語らずして状況を語らせる暗喩的なシーンのうまさといい、監督の力量が存分に発揮された作品ではないでしょうか。

役者さんもみな素晴らしい。主演の鶴瓶さんはまさにNHKの「家族に乾杯」みたいにいい味わいでしたし、研修医役の瑛太さんも好演でした。余貴美子さんは「おくりびと」に続いて、人生の深みを感じさせる名脇役ぶりを見せ付けてくれました。香川照之さんも、あいかわらず文句ないです。あと、特に素晴らしかったのは八千草薫さんですね。静かで上品な佇まいのなかに秘めた切なさ、悲しさ。井川遥さんとの親子関係などはとりわけ心を揺さぶられました。

なお、ぼくはほとんど予備知識なしで行ったのですが(予告編もあまり記憶にない)、鑑賞後にキャッチコピーをみたところ、もろネタバレでしたね(笑)。でも、たとえあらかじめネタバレしていたとしても、じゅうぶん鑑賞に堪えうるだけの中身の濃さはあったと思います。

(2009/07/31@イオン・シネマ金沢フォーラス)

★★★★★