かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

誰も守ってくれない

マスコミの過剰報道やネットによる匿名攻撃――激しいバッシングに晒される加害者家族をいかに保護すべきかを問う社会派作品。脚本にも携わっている君塚監督は確信犯的に大げさな描写をしているのでしょうが、それにしてもバッシングの様子はえげつないです。バッシングにしろ哀憫にしろ、事件として祭り上げられたものに対する瞬間沸騰的な騒ぎの馬鹿さ加減には日ごろから辟易していますので…。ただ、バッシングの急先鋒として象徴的に登場する新聞記者(佐々木蔵之介さん)の描き方(動機と収束の仕方)はうまかったと思います。

【以下、ネタバレあり】

僕がこの作品ではっとさせられたのは、被害者家族と加害者家族のそれぞれの心理です。加害者逮捕当時は警察の事務的な対応とさらなる悲劇のせいで、加害者の妹(志田未来さん)には同情したくなりますが、やがてその妹は保護任務に就く勝浦刑事(佐藤浩市さん)に悪態をつきはじめ、その姿がかなり不快に感じてきます。しかし、こういう態度は現状を受け入れられず混乱の極みにあることのあらわれなのでした。また、勝浦刑事は自らのトラウマとなった過去の事件の被害者家族(柳葉敏郎さん)から、癒えない怒りをぶつけられます。この被害者家族は本来穏やかな人だということは伝わってくるのですが、そんな理性的な人でも自制できない思いというのがあり、そしてその矛先は誰か具体的な人(できるだけ事件の原因に近い人=直接の原因でなくとも)に向けられるのです。こうした現象が精神科医・尾上医師(木村佳乃さん)によって解説され、腑に落ちました。

なお、この尾上医師の登場が唐突な感じがするかもしれませんが、公開当日にこの映画のプロローグ的ドラマ「誰も守れない」がテレビで放映されており、尾上医師がそのドラマでは被害者家族として、また勝浦刑事のトラウマ治療にあたる医師として登場しています。なので尾上医師は、ドラマを前提にするとじゅうぶん自然で不可欠なキャストなのです。また、三島刑事(松田龍平さん)は映画本編ではやや影が薄いですが、ドラマではかなり濃密に描かれており、勝浦刑事との絆(シャブ漬けにするぞ!背筋が凍るな…)はかなり見ごたえがありました、上司(佐野史郎さん)の思惑とか、勝浦刑事と家族の微妙な関係とか、ドラマを観ていると映画がさらに奥深く感じられたので、観ていてよかったと思いました。

ただ、自分の家族を顧みずに仕事に没頭するという自分の中には全くないマッチョな男性像というのが個人的に苦手なので、クライマーズ・ハイみたいに、またそのパターンの人物かよ…といううんざり感があった感は否めません。映画自体はいい出来ですなのが、★1つ減点なのはそれが理由です。

(2009/02/01@ユナイテッド・シネマ金沢)

★★★★