かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

【OEK定期254M】ロシアの巨匠キタエンコ~没後100年リムスキー=コルサコフの名曲

今回のOEK定期公演は、プリンシバル・ゲスト・コンダクター(首席客演指揮者)のドミトリ・キタエンコ氏が昨年10月以来の登場。リムスキー=コルサコフ没後100年にちなんで「シェエラザード」と「スペイン奇想曲」がロシアの巨匠によって演奏されます。さらに黒瀬恵さんの独奏によるプーランクのオルガン協奏曲も披露されます。

この3曲ならば、通常、スペイン奇想曲→プーランク→(休憩)→シェエラザードという曲順だろうなあと思うのですが、今回はその逆の順番で演奏されました。つまり3曲中最もメジャーな「シェエラザード」が1曲目です。これには少しビックリしました。いまでもその意図はよくわかりません(別に不満なわけではないですが)。

シェエラザード」といえば思い出すのが、2006年4月のOEK第200回定期公演。入退院を繰り返していた岩城さんが車椅子で指揮台にのぼり、タクトを振りました。この2ヵ月後に岩城さんは亡くなります。この200回記念公演が、岩城さんが金沢でOEKを指揮した最後の舞台となったのでした。僕自身としてはOEKのコンサートに足を運ぶようになって3回目の公演であり、ただただうっとりしていたように思います。

なにはともあれ「シェエラザード」です。僕の愛聴盤は、従来持っていたゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管弦楽団のものに加え、最近はストコフスキー指揮ロンドン交響楽団のもの。ともに超ロマンティックな「ぐいぐいきてます」的演奏で、そのメロメロな盛り上がりを楽しんでおりました。ところが、実はいずれもそれぞれかなりクセのある録音なのだそうです。翻って今回のキタエンコ指揮OEK。通常の編成に金管・パーカッションの必要数と、弦パートは中低音を少し増強(8-7-6-5-4)した程度ですので、当然、大音量で「ぐいぐいきてます」的メロメロ一辺倒な演奏ではありません。室内オケらしく、メリハリのきいたクリアで繊細な演奏でした。各パートがかわるがわる登場するソロ演奏がすっきり際立って聴こえます。とりわけ絶賛すべきはコンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんです(これはおそらくあの会場に来ていた衆目の一致するところでありましょう)。ヤングさんのヴァイオリン・ソロは、シェエラザードの劇的な世界を情感豊かに奏でます。時には甘美に揺れて、しかし節度を持って。丁寧で確かな技巧により繊細な高音弱音も安定しています。最後のか細く響く独奏にもしみじみと浸りつつ、切ない演奏が閉じられました。思えば、前述の200回記念公演でも、ヴァイオリン・ソロはヤングさんでした。あのときも相当感激したのを思い出しました。演奏後、聴衆はもちろん、キタエンコさんからも、団員からも称えられていました。

後半はプーランクのオルガン協奏曲から。マルティノン指揮フランス国立放送管弦楽団のCDを買って一通り聴いただけでほとんどなじみがないのですが、じっくり聴いてみますと、なかなかおもしろい曲でした。オルガンの荘厳な響き→豊かな残響→その残響が消えるかどうかというくらいの間で、弦楽がスパッとはじまる…この絶妙な感じが心地よかったです。なるべく頭を上に向けて聴いてみると、まるで全身で響きを浴びるような感覚になりました。これは2階最前列という座席のよさも寄与しているのでしょう。

最後はスペイン奇想曲。この曲もシェエラザード同様各楽器に見せ場があります。そういう意味では、OEKのような小編成で個性がクローズアップされる室内オケには意外と向いている(挑戦すべき)曲なのかもしれません。演奏はゆったりと楽しげに進み、それぞれのソロ演奏がじっくり堪能できます。ヤングさんは今回も大活躍。シェエラザードに続き、アビゲイル好きにはたまらない一夜であります。そうして迎えた華々しいフィナーレ。キタエンコさん、団員のみなさんも互いに拍手を送りあい、足を踏み鳴らし、満足の表情がうかがえます。プレイヤーも納得の演奏だったのでしょう。

アンコールはスペインつながりで、こちらも華やかな「カルメン」。ばっちり締まりました。前回のニューイヤーコンサートに続いて、今回も充実の演奏です。今年も順調に堪能しておりますぞ!!

オーケストラ・アンサンブル金沢 Orchestra Ensemble Kanazawa
第254回定期公演マイスター・シリーズ
The 254th Subscription Concert / Meister-serie

日時:2009年1月30日(金)19:00開演 Friday, 30 January 2009 at 19:00
会場:石川県立音楽堂コンサートホール Ishikawa Ongakudo Concert Hall
指揮:ドミトリ・キタエンコ Conductor: Dmitrij Kitajenko
コンサートミストレス:アビゲイル・ヤング Concertmistress: Abigail Young

ニコライ・リムスキー=コルサコフ N. Rimsky-Korsakov
 交響組曲シェエラザード」 作品35
 Scheherazade Op.35

  第1曲「海とシンドバッドの船」
  1. The Sea and Sinbad's Ship

  第2曲「カランダル王子の物語」
  2. The Kalendar Prince

  第3曲「王子と王女」
  3. The Young Prince and The Young Princess

  第4曲「バグダードの祭り、海、青銅の騎士像の立つ岩での難破、終曲」
  4. Festival At Baghdad. The Sea. The Ship Breaks against a Cliff Surmounted by a Bronze Horseman.


---休憩---


フランシス・プーランク F. Poulenc
 オルガン協奏曲(オルガン、弦楽とティンパニのための協奏曲) ト短調
 Concerto for Organ, Strings and Timpani in G minor

  ~オルガン独奏:黒瀬恵 Organ: Megumi Kurose
  ~ティンパニ独奏:菅原淳 Timpani: Atsushi Sugahara

ニコライ・リムスキー=コルサコフ N. Rimsky-Korsakov
 スペイン奇想曲 作品34
 Capriccio Espagnol Op.34

  第1楽章「アルボラーダ(朝の歌)」
  1st.Mov. Alborada

  第2楽章「変奏曲」
  2nd.Mov. Variazioni

  第3楽章「アルボラーダ(朝の歌)」
  3rd.Mov. Alborada

  第4楽章「情景とジプシーの歌」
  4th.Mov. Scena e canto gitano

  第5楽章「アストゥリアのファンダンゴ(スペイン舞曲)」
  5th.Mov. Fandango asturiano

(アンコール)
ジョルジュ・ビゼー G. Bizet
 「カルメン」第1組曲より「第1幕への前奏曲」(闘牛士の行進)
 Carmen Suite No.1 - Prelude