かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

しあわせのかおり

地元金沢が舞台の映画です。港町(大野町といいます)で小さな中華料理店を営む料理人・王さんのもとに、その料理に魅せられた女性・貴子が弟子入りするお話。過去に暗い影を持つ貴子は中谷美紀さん、実直で仕事に誠実な王さんは藤竜也さんが演じます。特訓したであろう料理の振る舞いも含めて、このふたりの演技が素晴らしいです。また、画面に映し出される料理はまことに美味そうで、演者さんもまた本当に美味そうに頬張るのです。空腹時に観たら悶絶モノでしょう。

金沢が舞台の映画ではありますが、兼六園金沢城も、ひがし茶屋も武家屋敷も登場しません。このようなコレミヨガシでない態度はいいですね。だって、この映画は金沢のそういった華やかな面とは無縁なんですから。王さんが奥様(八千草薫さん)と会って思い出話をする庭園は、普通は兼六園を使いたいところでしょうが、そうではありません。あれはたぶん小松の那谷寺ですけど、街中にあるちょっと雰囲気のいい庭園というくらいの意味合いでさりげなく使われています。

王さんにとっても、貴子にとっても、金沢というのは、東京から逃げ込んだ先にたどり着いた場末の町です。一方で彼らにとって終生ここで暮らすと決めた土地でもあります。乗客の少ないローカル電車、「雪見橋」という名のバス停(実在します)、寺町台地の坂の上の安アパート。このようなロケーションは(実際の地理的関係は無茶苦茶ですが)、隠棲地としての、そして安住の地としての金沢の空気を醸し出すことに成功したといえましょう。

また、金沢弁の野暮ったさも効果的でした。貴子に親切にしてくれる農家の息子、給仕のお婆ちゃん、料理店の常連客はの金沢弁は親しげな感じが出てたと思うし、逆に、貴子の旧職場の上司が言い放つ下品な金沢弁も場末感に一役買っていたように思います。

あと、王さんの故郷・紹興。水路が落ち着いた雰囲気で、港町の大野町とは町並みがどことなく似ていました。これも金沢が舞台に選ばれた要因のひとつかもしれません。

★★★★

(2008/11/23@ユナイテッドシネマ金沢)