かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

おくりびと

所属オーケストラの解散で職を失った元チェロ奏者が、郷里の山形で納棺師として生きていくというお話。モントリオール世界映画祭のグランプリを受賞したとかで話題になっていましたが、評判にたがわず素晴らしい作品でした。

誰にも訪れる人間の死というものに対して、じゅうぶん敬意が払われています。映画館の客層は僕より年上の人が大勢を占めていましたが、その多くの観客は、納棺の場面を自分の身近な経験に重ね合わせて、あるいはいずれ訪れるであろうその瞬間を連想して涙するのでしょう。僕も随所で涙が溢れて困りました。かといって、湿っぽいだけではなく、意外に笑える場面も少なくありません。また、厳かに死を見送る一方で、ふぐの白子やフライドチキンにむしゃぶりつく即物的な食事シーンも印象的です。死の表裏の関係にある生への貪欲な証を象徴しているかのようです。

なにより主演の本木雅弘さんが素晴らしい。チェロの演奏シーンといい、納棺の儀式といい、彼の所作の美しさには文句のつけようがありません。友人や妻は納棺師という職業を「恥ずかしい」「汚らわしい」と蔑むのですが、本木さんの所作が美しすぎるため、そういう忌み嫌う感情がまったく起こらないのが皮肉な点かもしれません。そして笹野高史さんが今回もおいしいです。「武士の一分」に続き、またまた最優秀助演男優賞モノです。

★★★★★

(2008/09/15@ユナイテッドシネマ金沢)