かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

ぐるりのこと。

何事にも几帳面でちゃんとしたい妻と、だらしがなくいい加減で頼りなげな夫。幼子を亡くしてから「ちゃんとできない」ことに思い悩み、妻は心を病んでいくのですが、法廷画家の夫は、公判の場で90年代に起こった凶悪犯罪に接しながら、とりわけ子どもが犠牲になった事件に心を痛めながらも、そんな妻のすべてを受け止め、妻のそばに温かく寄り添い続け、やがて夫婦は平穏を取り戻していきます。妻の両親や兄夫婦のさまざまな騒動も含め、どこの夫婦にも起こりそうな身の回り(=「ぐるり」)の困難と希望の日常を、ナチュラルな調子で丁寧に描いた傑作です。

妻が心を病んでいく様は、まるで村上春樹の小説に出てくる登場人物のように痛々しく(それだけ妻役の木村多江さんの凄絶な演技が素晴らしいのですが)、正直、観ているのが苦痛でもありました。しかし、夫から愛情のこもった素朴なひとことをもらった嵐の夜を境に、妻の心は徐々に再生されていきます。前半が痛々しすぎた分、妻が精神の均衡を取り戻すべく作業に没頭する後半は、微笑ましく清々しく観られます。

そして、そんな妻に穏やかに応対する夫・リリー・フランキーさんの飄々朴訥としたナチュラル感というのにも、たまらないものがあります。脇キャストも何気に豪華だったりして、絶妙のキャスティングでした。

とても素晴らしい作品です。当然★5つというべきでしょう。しかしながら、妻を持たずこの夫婦のようなアレコレを実感できない悔しさにより、堪能度としては★1つ減点とします(なんだそれ)。

(2008/08/29@シネモンド)

★★★★