かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

接吻

自らの逮捕に際して不気味に笑みを浮かべる殺人犯・坂口。テレビでその微笑を目の当たりにした瞬間、今まで孤独で抑圧された人生を歩んできたOLの京子は、坂口と自分は同類だと確信する。狂気的な主人公を演じる小池栄子さんの演技が光る作品です。

通常人の感情としては、まず、何の罪もない家族を惨殺したのに何も語らず反省の色が見られない坂口に怒りを覚えることでしょう。ましてや、長谷川弁護士が京子に対して始終諭してたように、面識もないのに一瞬にして坂口に共感し、ついには恋愛感情を抱く主人公の行動心情は、まったくもって理解不能でありましょう。それゆえ、結末はまったく予想外、驚愕のラストと評されているようです。

ところが、わたし自身は、坂口の態度も京子の心情も(決して肯定はしないけれども)そのように至った理由がすっかり腑に落ちたのです。なので、その後の坂口の心境の変化も、それを受けての京子の決意も、したがって最後はああなるということも、完全に予感できてしまいました。これって怖いことですよね。殺人犯と同じ思考をたどっているのですから・・・。でも、彼らがなぜこういう行動に至ったかと想像を働かせることは、今後このような悲劇が繰り返されないためには必要な態度ではないでしょうか。こういう連中を理解不能、異質だと断罪してそれでおしまいにするのは簡単ですが、それは自分が彼らとは違うと安心したいだけだと思うのです。

(2008/08/13@シネモンド)

★★★