かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

パッチギ!LOVE & PEACE

いうまでもなく「あの映画」をさす「太平洋のサムライ」は、脚本も役者も美術も撮影もそして制作者もひたすら安っぽく薄っぺらく描かれてちゃってます。一方、主人公の父の回想シーンにおける戦闘描写は、まるできれいごとではなく、生々しくてとことん悲惨です。このあからさまな対比はいかにも挑発的で、なるほど井筒監督の思い入れはひしひしと伝わってきます。思想自体をどうこう言うつもりはありませんが、あれほど明確なメッセージを込めるという姿勢には敬意を払わなければなりません。

そうして、回想シーンの意図は、物語終盤、キョンジャの舞台挨拶でのカミングアウトによって明らかにされます。キョンジャ役の中村ゆりさんはとても素晴らしい演技を見せてくれて(彼女こそが主役といってもいい)大変見応えがありました。ですが、正直、前作「パッチギ!」のカタルシスには及びません。前作はクライマックスですべてのエピソードがそれぞれ交差しながら一挙に収束されていきました。「悲しくてやりきれない」「イムジン河」の素朴で切なくも劇的なメロディもとても効果的でした。その一連の流れは圧巻のひとことに尽き、ストレートに快感を覚えたものです。いやあ、いかんせん前作が素晴らしすぎました。どうしても比べてしまいます…。

監督は強烈に「あの映画」を意識していたようですが、本当に意識すべきは自身の前作だったのかもしれません。

ただ、エンディング曲のチャンスの歌声は天使ですね。あれはすべてを許します。

★★★