かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

それでもボクはやってない

裁判の実態と理不尽な結末に衝撃を受けた!ともっぱら評判が高いこの映画ですが、その意味ではわたし自身はやや物足りなかった面があります。というのも、わたしはかつてその道を志したことがあり(当然箸にも棒にもかからずあえなく挫折しましたが)、裁判の進め方がああいったものだということも知識としては知っておりまして、個人的には目新しいことではなかったのです。むしろ、今にして思えば、わたしという人間はたとえ知識を得たとしても、あの現実の中でひとりの人間の人生を左右する判断に携わるような胆力は到底持ち合わせません。その重責に耐えられるわけもなく、いまでは平凡な小市民でよかったと自分を慰めているくらいです。とはいえ、そういった裁判の実態を知らない大多数の人にとっては、わたしがそれを初めて知ったときと同様に衝撃的であることでしょうし、その意味で示唆に富んだ秀逸な一作だったと思います。

それよりも役者さんの演技にうなりました。脇を固める役者さんたちがみなすばらしすぎます。役所広司さんやもたいまさこさんはさすがに安定感があり、山本耕史さんや瀬戸朝香さんのちゃきちゃき感は控えめな主演俳優を引き立てます。光石研さん、田中哲司さん、大森南朋さんら最近引っ張りだこの役者さんたち。いずれも手堅いです。留置場の怪人・本田博太郎さんはますますこの手の芸風に磨きをかけています。あと、裁判官。リベラルな正名僕蔵さんと保守的で憎たらしい小日向文世さんが絶妙です。

そして、なんといっても主演の加瀬亮さんですよ。不安や怒りや戸惑いや、そういった彼が抱いているもろもろの不快感がじわじわ伝わってくるんですね。おそらくは観客全員が彼の心情にシンクロしていったのではないでしょうか。いやいや、加瀬亮さんはすばらしい。加地亮といってもいいですよ。ふだんは引き立て役である地味な右サイドバック的存在ですけれど、ふっと気がつくと硫黄島に送り込まれてサイドを突破していたり、あるときは突如としてゴール前に現れ、裁判官を正面に見据えてその存在感を示します。でも基本は引っ込み気味で、主役を務めることはそうないのですが、その献身的で多才な働きぶりこそがまた魅力的なのです。

★★★★

それでもボクはやってない」公式サイト
http://www.soreboku.jp/index.html