かっきーの雑記(仮)

あちらこちらで興味が湧いたものをとりあえず書き留めておく用。

【映画】パリよ、永遠に(2015/7/3@シネモンド)

上映最終日に滑り込み。「パリよ、永遠に」。 原題は「diplomatie」(外交)。

ナチス・ドイツ占領下のパリ。ヒトラーからエッフェル塔オペラ座ノートルダム大聖堂などパリ市街の世界的建造物の破壊命令を受けたパリ防衛司令官コルティッツと、その計画を阻止せんとする中立国スウェーデンの総領事ノルドリンクの心理戦。

重厚かつスリリングな会話劇で、実に見応えがありました。後から思うと、たぶん冒頭から伏線がいっぱい張ってあったのでしょうけど、回収しきれず悔しい。最後のタバコの意味は、鑑賞翌日に気づました。これらの伏線の意味がその場でわかっていたらカタルシスはいかばかりだったことでしょう。うう…できればもう一度見たい…というくらい面白かった。

★★★★★

【映画】博士と彼女のセオリー(2015/7/1@イオンシネマ御経塚)

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「ホーキング、宇宙を語る」で有名な車椅子の天才物理学者スティーヴン・ホーキング博士。若くしてALSを発症した彼を献身的に支える妻ジェーンと歩んだ半生が描かれます。

スティーヴンが、抗えない現実に苦悩し、やがて受け容れる過程とか、ああ、なるほどと思わせる説得力がありました。反面、ジョークで切り返したがるスティーヴンのしなやかさもいいですね。随所の映像処理も素敵。

あとやっぱり主演のエディ・レッドメインが素晴らしかったです。いい映画でした。

★★★★

【OEK定期364PH】五嶋みどりのシューマン、井上道義のブラームス(2015/6/22@石川県立音楽堂コンサートホール)

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五嶋みどりさんと井上指揮OEKの共演は、2010年11月のチャイコン以来です。定期公演としては初登場。

プログラムはシューマンのヴァイオリン協奏曲。ピアノ協奏曲のような派手さがあるわけではなく、演奏される機会は少ないと思います。漫然と聴いているとひょっとして退屈かもしれません。しかし、みどりさんの内省的でストイックなヴァイオリンは、我々聴衆にも抜き差しならない緊張感を与え、その抑圧的な曲調にすっかり惹き込まれていきました。さすがみどりさん、今回もまた唸らされました。また、シューマンは(交響曲は特に)第一印象はとっつきにくいが、意識して集中して聴くと必ずその魅力に気づく、という個人的シューマン体験が今回も実証された形(笑)。

後半はブラームス2番。シューマンと続けるとやはり濃いですね。実によろしい笑。全体的にゆったりめのテンポで、丁寧にたっぷりと聴かせてくれました。井上さんは(ブログには書いていないのですが)3月の定期公演でのシューベルト「ザ・グレート」の完成度の高さといい、病気から回復後は特に、巨匠の風格満載のように思います。

オーケストラ・アンサンブル金沢
第364回 定期公演 フィルハーモニーシリーズ
2015年6月22日(月)19:00開演 
石川県立音楽堂コンサートホール

指揮:井上道義
ヴァイオリン:五嶋みどり

ロッシーニ:歌劇「シンデレラ」序曲

シューマン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
 Vn. 五嶋みどり

ブラームス交響曲第2番 ニ長調 作品73


OEKふだん着ティータイムコンサート Vol.18@金沢市民芸術村(2015/6/14)

毎年恒例のOEKふだん着ティータイムコンサートです。金沢市民芸術村に出かけてまいりました。

この日は夏を思わせる暑い日。水路・水場ではこどもたちが水遊びを楽しんでいます(ホントはだめなんだけど)。そんな光景を横目に、第2部「室内楽コンサート」より参加しました。

無料コンサートのため著作権料が発生しないので、近現代曲の珍しい曲が聴ける貴重な機会なのです。演奏曲は以下の通り。

●ルドヴィート・カンタ、ソンジュン・キム(vc)

Sting:Fragile (2CELLOS


NirvanaSmells Like Teen Spirit2CELLOS



●松木さや(fl)、加納律子(ob)、遠藤文江(cl)、柳浦慎史(fg)、金星眞(hr)

ダンツィ:木管五重奏曲 ト長調より第1楽章

バーバー:サマーミュージック


ロペス:レット・イット・ゴー


●早川寛(vc)、今野淳(cb)

バリエール:2本のチェロのためのソナタ


●岡本えり子(fl)、木藤みき(cl)、渡邉聖子(fg)

F.ドゥヴィエンヌ:フルート、クラリネットファゴットのための三重奏曲 作品61-5


●松木さや(fl)、柳浦慎史(fg)

ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ 第6番 I Aria, II Fantasia



●若松みなみ(vn)、ソンジュン・キム(vc)

ラヴェル:ヴァイオリンとチェロのためのソナタ



●坂本久仁雄(vn)、大澤明(vc)

レオナール/セルヴェ:ベートーヴェンの主題による大二重奏曲 第2番

スーザ/B. ドゥコフ編:星条旗よ永遠なれ(ヴァイオリンとチェロ)



●ダニエル・グリシン(va)、ルドヴィート・カンタ(vc)

ベートーヴェンヴィオラとチェロのためのデュオ

ヒンデミット:ヴィロラとチェロのためのデュオ



●松井直(vn1)、上島淳子(vn2)、石黒靖典(va)、大澤明(vc)

ボロディン弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調 より 第一楽章 アレグロ・モデラー




新入団のフルート、松木さやさんが大活躍でしたね。
もちろん我らが大澤親分と坂本さんの「難曲探検隊」も健在でした(^^)v

井上道義×野田秀樹「フィガロの結婚~庭師は見た!」(2015/5/26@金沢歌劇座)【ネタバレあり】

フィガロの結婚金沢公演


モーツァルトフィガロの結婚」といえば、何と言っても「序曲」が有名です。実は私が初めて石川県立音楽堂へオーケストラ・アンサンブル金沢の公演を聴きに行った時、プログラムの1曲目がこの「フィガロの結婚」序曲でした。3階席の一番安い席でしたが、その華やかで奥行きのある響きに、一瞬にして鳥肌が立つ感動を覚えました。まさにこの瞬間、私はオーケストラ演奏会の虜となったのでした。

その後もこの曲は節目節目に登場し、いつも私に昂奮と陶酔を与えてくれます。岩城宏之さんの後継として井上道義さんがOEK音楽監督に就任した記念の演奏会では、「(故岩城夫人)木村かをりさんに捧げる」としてアンコールにこの曲を演奏されたのも印象深いです。また、個人的なことを申せば、2年前の自分の結婚披露宴の際、ウェディングケーキはこの曲の冒頭旋律の譜面をモチーフとしたデザインにしてもらいましたし、お色直し後の入場曲はこの曲でした。

ウェディングケーキ


そんな思い入れたっぷりの「フィガロの結婚」ですが、オペラとして全編鑑賞したことはありませんでした。ところがある日、ついに金沢でオペラ「フィガロの結婚」が上演されるという知らせが! 指揮・総監督はOEK音楽監督の井上道義さん。管弦楽はもちろんオーケストラ・アンサンブル金沢です。しかも……演出はあの「野田秀樹」さんのこと! クラシック界と演劇界の鬼才による奇跡のコラボです! これは見逃せない! 絶対に行かねば!! …というわけで、発売開始早々にチケットを確保し、首を長くしてこの日を待っておりました。そして迎えた上演当日、期待通りの大満足の公演でございました。

歌劇座看板開演前


【(注)以下、壮大にネタバレあります】

井上さんの熱烈なラブコールにより演出に迎えられた野田さんの回答は、いわば「井上道義野田秀樹の『結婚』」。それはまさに「オペラ」と「演劇」、あるいは「西洋」と「日本」の出会いとでも言うべきものでした。

オペラは西洋が舞台のものが多く(この物語もスペインが舞台)、本来、西洋人がこれを演じる方が自然でありましょう。日本人がイタリア語のオペラを演じるというのは、正直、違和感がないわけでありません。しかし、諸々の事情によりキャストを全員西洋人で揃えるというわけにもまいりますまい。というわけで今回は、アルマヴィーヴァ伯爵、伯爵夫人ロジーナ、小姓のケルビーノの三人が外国人キャスト、それ以外は全員日本人キャストという混成チームとなりました。まあ、こういうキャスト構成はよくあるパターン。

ところが、今回の井上×野田作品では、こうした(以前からなんとなく実は違和感があると思われていた)事情を逆手に取って、むしろこの事情を積極的に利用して物語に活かす道を選んだようでした。物語の舞台を幕末の長崎に変更し、登場人物は、黒船に乗って日本にやって来た伯爵夫妻と、彼らに仕える現地の日本人たちという設定に引き直されました。日本人役の名前も、フィガロは「フィガ郎(ふぃがろう)」、スザンナは「スザ女(すざおんな)」、マルチェリーナは「マルチェ里奈(まりちぇりな)」、バルトロは「バルト郎(ばるとろう)」といった具合です。

そして、日本人だけが登場する場面では、日本語が用いられており、これにより言語に関する違和感がずいぶん緩和されていました。たとえば、冒頭のフィガ郎とスザ女が新居となる部屋でベッドの採寸をする場面では、原語ではフィガロが「Cinque...Dieci...Venti...(5、10、20…)」と歌うところ、フィガ郎が「三寸、四寸…」と日本語で歌い始めます。特にここは上演の最初の場面ですので、聴衆も、ああ日本語で聴けるのだなと承知するわけです。とりわけ今回は聴衆に野田ファン、演劇ファンが多く、私も含めオペラ初心者も多いため、これはずいぶん安心感を与えるように思います。

他方、その他の場面、伯爵夫妻やケルビーノが登場する場面、あるいは日本人キャストによる有名なアリアにおいては、オリジナル通りイタリア語が用いられ、原語版の醍醐味を損ないません。なお、初めて伯爵が登場する場面では、それまではずっと日本語で進行していたものですから伯爵も最初はカタコトの日本語を話すのですが、「無理して日本語を喋らなくていいんですよ」とツッコミが入ります。そして、以後、伯爵はイタリア語で会話し、またその際は同時に、日本語訳が字幕が映し出されるようになる、という共通認識が瞬時にできあがります。うまいことできてますわ。

さらに、今回の副題が「庭師は見た!」となっている通り、庭師のアントニオならぬ「アントニ男(あんとにお)」の目線から見た伯爵邸のドタバタ劇という形で、アントニ男が狂言回しとしてナレーションを入れる手法が取られています。というわけでこのアントニ男は歌手ではなく、劇団「ナイロン100℃」の俳優である廣川三憲さんによって演じられました。この「フィガロの結婚」はとにかく登場人物間の関係が複雑なため、こういった説明役がいるとおおいに鑑賞の助けになります。今回も要所要所で現われ、登場人物を操り人形のように動かしながら、現在の状況をその都度説明してくれました。なお、アントニ男にも一部歌の場面もあるのですが、歌も難なくこなしていてその点も素晴らしかったです。

また、演出として効果的だったのが、「演劇アンサンブル」とクレジットされていた方々によるエキストラ演技やダンス表現でした。合唱団の面々がエキストラとしてその他群衆を演じることが多いですが、今回はそれを精鋭のプロフェッショナル陣が担います。特に三人の女性よるバレエダンスが演者の感情をさらに際立たせていて良かったです。

そして、OEKファンとしては、モーツァルトの音楽を堪能できたこともおおいに嬉しいことでした。井上さんの遊び心にあふれた軽快な世界がオーケストラ・アンサンブル金沢により活き活きと繰り広げられました。

あと興味深かったのは「少年」役のケルビーノ。普通は女性のメゾソプラノが男装して演じることが多いのですが、今回は大柄な男性のカウンターテナー! これがまたいろいろなギャップを生み面白味を醸しだしていたようです。

【(注)以下の部分が最も大いなるネタバレです!】

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金沢市玉鉾「野間神社」に(たぶん)市姫神社由来の祠

北陸新幹線開業でブームに沸く金沢。
中でも、金沢市民の台所として親しまれている「近江町市場」は、観光スポットとして俄に注目を集め、週末は観光客であふれています。

その近江町市場の氏神産土神・うぶすながみ)が市姫神社です。近江町市場の北東、国道159号線を挟んだ場所にあります。



で、この市姫神社ですが、昔は市内郊外の「玉鉾」にあったと言われており、そのことを示す祠があるという噂を聞きつけました。地元民としては、玉鉾といえば野間神社に違いない!とアタリをつけて、現地に足を運んでみました。

野間神社

鳥居(境内東側)をくぐると正面(境内西側)に本殿がありますが(まずはお参りをさせていただきました)、左手(境内南側)にもうひとつ鳥居があります。

野間神社内鳥居

その奥には、由緒書きとともに、小さな祠が。

由緒書きと祠

由緒書きを見てみます。

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読みにくいですが…何とか解読して書き起こしてみましたよ。

野間神社

鎮座地  金沢市玉鉾三丁目一三二/一三三番地
祭神 豊宇賀能売神(とようかのめのみこと)
祭日 
 例祭 四月二十二日
 春祭 四月二十一日より三日間
 秋祭 九月二十一日より三日間

由緒
当社は加賀郡に属する延喜式内野間神社であるといわれ
加賀國式内社等旧社記に「野間神社 式内一座玉鉾郷玉鉾村鎮座祭神豊若陽霊尊兮玉鉾宮と称す
旧伝にいはく 往古以来加賀郡之處中古石川郡内となる」と記されている
犀川筋の移動により石川郡に編入されたためである

日本総國風土記に「玉戈野間神社 圭田三十三東祭る所 豊宇賀霊尊なり
斎明天皇二年丙辰九月始めて圭田を奉り神禮を加ふ 神家巫戸等在り」
と見えて古来皇室の崇敬篤き名社であったことがわかる

永らく玉鉾神社と号して来たが 明治十四年十月 野間神社の旧称に復した
明治三十九年十二月 神饌幣帛料供進(しんせんへいはくりょうきょうしん)の村社に指定せられた

旧鎮座地は西北方にあったが二百年程前に現地に移ったのである
東方に宮畑と称する所は攝社市姫社の跡地といわれ
境内東南隅にある石祠はもと本殿内に祀られてあったという

茲に社殿の改築を記念して此の碑を建つ

昭和四十八年九月

尾山神社宮司
鏑木勢岐 撰

東方に宮畑と称する所は攝社市姫社の跡地といわれ
境内東南隅にある石祠はもと本殿内に祀られてあったという


・・・とのことです。明記されていないのが残念ですが、文脈的に、この「石祠」の「本殿」とは市姫神社のことを指すと思われます。

そして、「境内東南隅の石祠」とは、まさにこれでございます!

石祠



というわけで、おそらく、これが「市姫神社が以前玉鉾にあったことを示す祠」であると思われるのでございます。

以上、調査結果でした!





鑑賞記録:ラ・フォル・ジュルネ金沢2015本公演3日目(2015/5/5)

昨日はラ・フォル・ジュルネ金沢2015最終日。最終日にしてついに本気を出して?5公演ハシゴで楽しみました。

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毎年聴いてるアンヌ・ケフェレックさん。最近は小曲を並べて一気に弾いていくスタイル。バッハのコラールやスカルラッティのコロコロとしたソナタなど優しく美しい音色が連なり、最初と最後はヘンデルで締めるという構成。何の違和感もなく淀みなく決まってました。

東フィルのベト7バロックとは何の関係もないのですが指揮がチョン・ミョンフンと聞けば震災直後に中止になったチェコフィル金沢公演のリベンジとばかり参戦(Sさんチケット譲ってくれてありがとう)。さすが大編成でダイナミックな演奏。コンマスの隣の人の終始ドヤ顔がツボだったw

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OEK弦楽メンバーによるヴィヴァルディ四季。これは素晴らしかった(Sさん重ねがさねありがとう)。アビゲイル・ヤングさんのリードのもとメンバーの息がぴったりと合って絶妙。何とも気持ちの良いひとときでした。…やっぱりベト7もキリリとしたOEKのほうが好き(ボソッ…

ラーンキ一家のピアノとケラー指揮コンチェルト・ブタペスト。ハンガリーの現役作曲家ドゥカイ氏(会場に来てた)の楽曲と、バッハの2台/3台ピアノ協奏曲の組み合わせが3つ。まずは夫婦で2台ピアノ、そして息子が加わり3台。なんか独特な世界に引き込まれたようで、なかなか珍しいものを聴かせてもらいました。

最後は恒例、交流ホールでのクロージングコンサートです。長蛇の列でしたがステージ上手ティンパニ裏エリアの最前列席を確保。
曽根麻矢子さんのチェンバロから、池辺晋一郎さん司会で進行(池辺氏「チェンバロはピアノの白鍵が黒いんですよ~新ハッケン!」(会場拍手)「そういうのはいいです」)。さらにヌオーヴォ・アスペット・ブレーメン古楽アンサンブル。
井上さんとOEKが登場し、内藤淳子さんと岡本誠司さんによるバッハの2台ヴァイオリンのための協奏曲。続いてソプラノの小林沙羅さんとバスの森雅史さんによるバッハのカンタータ。祝祭的でありながら荘厳な、なんとも心地よい雰囲気。
そして金沢フィガロクワイヤの合唱が加わりバッハ「主よ人の望みの喜びよ」とヴィヴァルディ「グローリア」。
最後は青島広志さん扮するヘンデルが現れ「メサイヤ」より「ハレルヤ」コーラス。皆んなで歌いましょうと促され、周りの人につられてとりあえず立ち上がったものの、実は歌ったことなく(爆)、合唱団の口を真似て何となく参加してみました。これはこれで楽しかったw

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という訳で、テーマがバロックだったため派手に盛り上がる感じではなかったものの、今年もしっかりラ・フォル・ジュルネを満喫したのでした。